工場を経営するためには、電力や火力など、さまざまなエネルギーが必要です。
物価高が続く日本では、同じ売上げを維持していても、エネルギーコストが増加しているので利益が減少している工場が増加しています。
そこで今回は、工場の省エネ改善事例と改善アイデアを紹介していきます。
少しでも工場のエネルギーコストを減少させたい経営者は、最後まで読み進めてみてください。
工場が省エネに向けた改善をする理由
工場が省エネに向けた改善をする理由は、以下の通りです。
- 電気代や燃料費が高騰している
- 世界的にCO2削減を求められている
それぞれの理由を知ることで、工場の省エネに向けた改善に取り組む理由と必要性が理解できます。
電気代や燃料費が高騰している
工場経営において、電気代や燃料費などの負担は重要な問題です。
この電気代や燃料費が高騰することで、工場経営にかかるコストの増大と利益の減少が起こるためです。
経済産業省資源エネルギー庁が発表した令和3年度(2021年度)のエネルギー消費統計結果では、最終エネルギー消費量は3,999PJ(ペタ・ジュール)でした。
前年度と比べると9.3%増加しており、国内のエネルギー消費量は増加していることが分かります。
エネルギー消費量を削減するためには、工場全体での省エネ改善が不可欠です。
省エネ改善を進めることで余分な電気代や燃料費を抑制し、利益向上につながるためです。
参照:経済産業省資源エネルギー庁「令和3年度エネルギー消費統計結果概要」
世界的にCO2削減を求められている
現代の工場経営者にとって、環境問題への対応は避けて通れない課題です。
特に、CO2削減は世界的な要請であり、日本国内の工場も例外ではありません。
2020年に当時の菅政権が「2050年カーボンニュートラル宣言」を行いました。
カーボンニュートラル宣言は、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにすることに挑戦するという内容です。
省エネを通じてCO2排出量を削減することは、地球環境への貢献だけでなく、企業の社会的責任を果たすことにもつながります。
これからの工場経営では、単に利益を追求するだけでなく、いかにCO2を削減できるかが大きな目標になります。
工場の省エネ改善事例7選
工場の省エネ改善の事例を8選紹介していきます。
- 燃料炉の省エネ改善
- ボイラーの省エネ改善
- 動力の省エネ改善
- コンプレッサーの省エネ改善
- 冷凍や冷蔵設備の省エネ改善
- 空調の省エネ改善
- 照明の省エネ改善
それぞれの事例について、詳しく解説していきます。
燃料炉の省エネ改善
燃料炉の効率化は、工場のエネルギー使用を大幅に削減することができます。
具体的には、以下のような改善が有効です。
- 炉壁の断熱材や塗料の改善
- 排ガスや排熱の再利用
- バーナーの定期的な保守点検
特に、炉壁の断熱材は燃料炉の温度に直接影響のある部分です。
断熱材に最適な材料や製法を選び、燃料炉の省エネを進めましょう。
断熱材ほどの効果はありませんが、塗料を塗り直すことでも省エネ改善ができます。
塗料は断熱材よりも安価なので、まずは塗料の改善から始めてみてください。
また、大量に発生するガスや熱を別の施設のエネルギーに応用することも省エネ対策として有効です。
エネルギーの再利用には大規模な施工が必要になりますが、予算の確保が難しい工場はバーナーの保守点検を徹底するなど、費用のかからない改善を進めていきましょう。
ボイラーの省エネ改善
ボイラーの省エネ改善も効果的です。
適切な保守と設定調整により、ボイラーの熱効率を最大限に高める環境を維持しましょう。
具体的には、以下のような省エネ改善が有効です。
- 蒸気圧力の設定見直し
- スチームトラップの定期的な保守点検
- ドレン排出の抑制
ドレンは、コンプレッサーに吸い込まれた空気が圧縮され、配管内で冷やされて溜まった水分のことです。
ドレンは定期的に排出しないと、コンプレッサーに負荷をかけたりシリンダーや電磁弁が破損したりします。
ドレンを排出する際は、圧縮した空気も一緒に抜けてしまうので、ドレンを抑制しながらボイラーを稼働させていくことが重要です。
動力の省エネ改善
動力設備の省エネ化は、電気モーターやポンプなどの改善を含みます。
工場の動力設備は常時運転されることが多いため、小さな改善でも大きな節約につながります。
具体的には、以下のような改善が有効です。
- 省エネベルトへ交換
- インバータによる最適化
- 無負荷運転の防止
電動機には、一般的に駆動用のVベルトが使われています。
このVベルトを省エネベルトへ交換することで、省エネ効果が期待できます。
内部の発熱も予防できるので、ベルトや本体への負担も軽減して寿命を延ばせるでしょう。
また、インバーターを採用することで、モーターの回転数やトルクを制御できます。
長期的な省エネ改善を行う際は、インバーターの採用を検討してみましょう。
コンプレッサーの省エネ改善
コンプレッサーは工場内で広く使用されているので、優先して省エネ対策が必要です。
具体的には、以下のような省エネ改善事例があります。
- エアー漏れの対策
- 空気タンクの設置
- 圧力の低減
エアー漏れを起こしていると、必要以上にコンプレッサーが空気を圧縮しようとして電力を消費してしまいます。
定期的に配管を保守点検し、エアー漏れが起きていないか確認しましょう。
また、空気タンクを設置することで、圧縮した空気を維持できるようになります。
コンプレッサーの負荷がこまめに変動する工場では、本体への負担が増大して寿命を縮めてしまいますが、空気タンクを設置することで安定して稼働し、長く使えるようになります。
そして、コンプレッサーの圧力を低減することも有効な省エネ改善です。
理論上、コンプレッサーの吐出圧力を0.8MPa-absから0.1MPa下げられると、約8%の低減が見込めます。
長時間稼働するコンプレッサーの省エネ対策は、工場全体の省エネ対策になります。
冷凍や冷蔵設備の省エネ改善
冷凍や冷蔵設備は、工場のなかでも特に多くの電力を消費します。
冷凍や冷蔵設備の省エネ改善には、以下のような事例があります。
- エアカーテンの設置
- 設定温度の適正化
- インバーター圧縮機の導入
室内の冷気を逃さないためには、出入り口付近にエアカーテンを設置するのが効果的です。
エアカーテンには外気の流入と冷気の流出を予防する効果があるためです。
安価で導入できるので、優先してエアカーテンを設置しましょう。
また、設定温度の適正化や、インバーター圧縮機の導入も省エネ効果が期待できます。
インバーター圧縮機は、従来の圧縮機よりも蒸発温度が高く、効率的な運転が可能なためです。
人の出入りが多い時間帯は高回転運転による冷却能力で適正温度を保ち、人の出入りが少ない時間帯は低回転運転となり省エネになります。
空調の省エネ改善
空調システムは一年を通じて多くの電力を消費します。
以下のような省エネ改善を行って、電力消費を抑制しましょう。
- 適性温度の設定
- こまめなフィルター清掃
- 屋根への遮熱塗料の施工
空調システムは、設定温度を見直すことで省エネになります。
夏でも温度を下げ過ぎずに一定の温度を保つことで、室内の温度を保ちつつ省エネ改善ができます。
空調システムのフィルターは、埃が溜まってしまうと消費電量が増加してしまうので注意が必要です。
月に2回程度掃除する習慣を作って、省エネを維持しましょう。
また、屋根に遮熱塗料を施工するのも効果的です。
屋根は日差しを集めて建物全体の温度を上げてしまいますが、遮熱塗料を使うことで過剰な温度上昇を抑制できます。
照明の省エネ改善
照明は工場全体で常時使用されるため、省エネ効果が見込めます。
照明の省エネ改善には、以下のような事例があります。
- LED照明への交換
- 不在時の消灯
- 取り付け場所の最適化
これまで、工場では蛍光灯や白熱灯を用いるのが一般的でした。
この照明をLED照明に交換することで、従来の蛍光灯や白熱灯の60%~80%程度の省エネ効果が期待できます。
人がいない施設の電気をこまめに消灯したり、照明の取り付け位置を最適化したりすることで、より一層省エネにつながります。
照明は毎日使用するものなので、早い段階で省エネ改善することで多くの恩恵を受けられるでしょう。
工場の省エネ改善に導入しやすいアイデア3選
工場の省エネ改善に導入しやすいのは、以下のようなアイデアです。
- 太陽光発電と蓄電池
- 空調システムの改善
- 電力契約の見直し
それぞれのアイデアについて、詳しく解説していきます。
太陽光発電と蓄電池
太陽光発電と蓄電池の組み合わせは、再生可能エネルギーの活用として非常に有効です。
屋根に太陽光パネルを設置し、昼間の電力を蓄電池に貯蔵することで、夜間の電力使用を削減できます。
具体的には、太陽光発電により昼間に発電した電力を蓄電池に蓄え、夜間や電力需要のピーク時に蓄電池の電力を利用することで、電力コストを大幅に削減可能です。
太陽光発電は天候に左右されることがありますが、蓄電池の導入によって一定のエネルギー供給を確保し、安定した電力を確保できます。
空調システムの改善
空調システムの効率化は、特に電力消費が大きい工場では重要です。
工場内の空調システムを最適化することで、不必要な電力消費を削減できます。
具体的には、エリアごとに異なる温度設定を行い、不必要なエリアの冷暖房を抑えることで、工場全体の電力効率を大幅に向上できます。
また、夜間や稼働していない時間帯の空調は、自動制御システムで最小限に抑えることも可能です。
電力契約の見直し
電力契約の見直しは、工場の電力削減に直結します。
ピーク時の電力使用を避けることや、最適な電力プランを選択することで、電気料金を削減できるためです。
特に、ディマンド・リスポンス(DR)の活用は、電力コストを効果的に管理する方法の一つです。
ディマンド・リスポンスとは、消費者が電力使用量を制御することで電力需要パターンを変化させることです。
電力ピーク時には生産ラインの一部を一時停止させたり、非生産時間帯に作業をシフトするなどの調整を行うことで、ピーク時の電力使用量を抑制できます。
また、スマートメーターを導入して電力消費をリアルタイムで監視することで、消費電力を効果的に管理できます。
参照:経済産業省資源エネルギー庁「ディマンド・リスポンスってなに?」
工場で省エネ改善を行うメリット
工場で省エネ改善を行うことで、以下のようなメリットがあります。
- 設備の寿命が延びる
- 企業のイメージアップにつながる
それぞれのメリットについて、詳しく解説していきます。
設備の寿命が延びる
省エネ改善によるメリットの一つは、設備の寿命の延びることです。
エネルギー管理を適切に行うことで負荷を軽減し、長期的な設備の運用が可能になるためです。
その結果、長期的なコスト削減にもつながります。
また、エネルギー効率の高い設備は一般的に耐久性が高いので、メンテナンスの頻度も低くなります。
企業のイメージアップにつながる
省エネ改善への取り組みは、企業の社会的責任活動としても評価されます。
環境に配慮した工場の経営は顧客やビジネスパートナーからの信頼を高め、企業イメージアップにつながるためです。
省エネによるCO2排出量の削減や再生可能エネルギーの効率的利用は、環境保護に対する企業の取り組みを示し、競合他社に優位性をアピールできます。
特に、環境意識が高い顧客に対しては、省エネ取り組みが取引先選択の重要な要因となりえます。
持続可能な省エネ対策の採用は、企業の長期的な成長と成功の重要な基盤となるでしょう。
省エネを含むさまざまな工場の改善事例については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ合わせて参考にしてください
まとめ:工場の省エネ改善事例を参考に利益アップを目指そう
今回は、工場の省エネ改善事例と、省エネ改善のアイデアを中心に解説しました。
工場が省エネ改善に取り組むことで不必要な固定費を削減し、利益アップにつながります。
利益を増やすことで、従業員の雇用を安定させたり新たな設備投資をしたりして、競合他社に優位になります。
LED照明への交換やエアカーテンの導入など、安価な省エネ改善事例も紹介したので、取り入れやすいものから実践してみてください。
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