介護業務の改善をおこなおうと考えても何から始めたら良いかわかりませんよね。
そこで本記事では、介護事例改善のポイントと手順についてまとめました。
具体的な手順や参考となる事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
介護業界の人手不足や業務効率化などを改善する方法をお探しですか?現場目線で業務負担を減らし働きやすい環境を作るために何から始めたらいいかわからないという方はまずはお気軽にご相談ください。
介護の業務改善で知っておきたい2つのポイント
介護の業務改善といっても何から始めるべきかわからない人もいるでしょう。
そこでまずは業務改善の基本である2つを解説します。
- 5S活動
- 3M削減
2つを意識して改善を進めていけば介護業務は改善されていきます。
以下で具体的にどのような内容なのかを解説するので、ぜひ意識してみてください。
5S活動
5S活動は、整理・整頓・清掃・清潔・躾の5つの要素を指し、効率的な職場環境を構築する手法です。
具体的には以下の方法で進めます。
- 必要なものを整理整頓
- 定位置を設けて必要な物がすぐに見つかるようにする
- 職場を清掃する
- 清潔さの品質を高める
- 教育による維持管理の徹底
これらの取り組みは効率性や生産性を向上させるだけでなく、従業員のモチベーションや安全意識の向上にも貢献します。
3M削減
3M削減は、むだ、むら、むりを削減する取り組みです。
具体的には以下の通りです。
- 「むだ」を減らすために不要な作業や在庫、運搬などのムダを見つけ出し効率化を図る
- 「むら」を排除し全体最適を図ることで負担を減らし、サービスの品質向上を目指す
- 過剰な負荷や負担の「むり」なくすことで、従業員の負担を軽減し生産性を向上
3M削減は継続的な改善を促し、組織全体の効率性や競争力を高めるとともに、従業員の働きやすさやモチベーション向上にも繋がります。
介護業務改善に対して自治体で取り組むべきこと
介護業務改善は、事業所だけが取り組んでも改善されるものではありません。自治体や地域のサポートも必要です。
自治体が地域の中で介護サービスを生かしていこうとしなければ、今後の介護業界はより厳しい環境になってしまうでしょう。
そこで以下では、自治体がどのようなことに取り組むべきかを解説します。
地域全体で取り組む
介護施設や事業所が地域の介護サービス拠点として機能するためには、業務改善だけでなく、地域との信頼関係の構築が重要です。
介護に対する社会的承認を高めるためには、介護の魅力を発信し、若い世代に介護職への理解を深める取り組みが必要だからです。
地域の実情を考慮しながら、福祉関係者だけでなく雇用や教育など様々な関係者と連携し、地域全体で取り組むことが求められます。
「介護現場革新会議」の開催
自治体での介護現場革新会議の開催も進めるべきです。
平成31年3月にとりまとめられた「介護現場革新会議」の基本方針では、介護サービスの質の維持・向上、ロボット・センサー・ICTの活用、介護業界のイメージ改善などが重要視されました。
これらの取り組みは、現場のスタッフの働き甲斐を高め、サービスの質や処遇の向上につながります。
自治体は地域全体での取り組みを主導し、介護施設間での経験共有や業務効率化の推進、地域住民に対する介護の魅力の理解を促進する必要があります。
また、雇用や学校関係者との連携も重要であり、地域内での新たな連携の可能性を探ることも求められています。
以下で、さらに具体的にどのように会議を進めていくのかについて解説します。
地域の介護現場の課題を共有
地域の介護現場の課題を解決するためには、まず関係者が集まって地域の現状を把握し、共有することが重要です。
その上で、地域資源を活かしてどのようなアプローチが可能か検討し、地域資源の充足状況を明らかにします。
さらに各主体が行っている事業や取り組みを共有し、新たな連携の可能性を模索して地域の課題に対する対応方針の策定を行います。
事業整備計画
介護施設が地域での役割を継続するには、業務効率化と職員の人材確保が重要です。
地域医療介護総合確保基金では、介護ロボットやICTの導入支援や職員支援のセミナーなど様々な支援が提供されています。
地域の実情に合わせてこれらの支援を整備し、介護施設が地域のニーズに応えられる体制を整えることが重要です。
地域のモデル施設・事業所の育成
介護施設の業務を改善するには、地域全体で一度モデル施設を作るべきです。
なぜなら一つのモデル施設があれば他施設へ伝わっていくからです。
いくつもの業務改善方法があるなかで、すべての施設が業務改善をおこなうのはまず難しいでしょう。
ですから一つの施設に注力して、先にモデルとなる施設を作った方が広がりやすいのです。
介護施設の業務改善の手順
介護施設の業務改善手順は、以下のように進めていくと良いでしょう。
- 業務改善の体制整備
- 現状の課題や問題を可視化
- 課題解決の実行計画をたてる
- 計画の実行
- 内容の振り返り
- 計画改善
以下でそれぞれの手順で何を行うべきか、具体的に解説します。
1.業務改善の体制整備
業務改善を推進するためには、まず体制を整えましょう。
チームを立ち上げて計画策定や実行をスムーズに進めることが重要です。
チームのメンバーはマネジメント層、中堅層、現場職員からバランスよく選ぶことが大切です。
人材不足でチーム立ち上げが難しい場合は、積極的なメンバーを集めて現状の課題を可視化しましょう。
2.現状の課題や問題を可視化
業務改善のためには、現状の業務課題や問題を明確に把握することが重要です。
アイデア出しに飛び込む前に、職員からのヒアリングを通じて問題を可視化しましょう。
例えば以下のような問題点がないかを洗い出します。
- 口頭連絡が多く情報伝達に抜け漏れがある
- コミュニケーション機会が不足している
- 記録作成に時間がかかっている
問題の抽出には日々の業務を詳細に分析することで漏れを防げます。
3.課題解決の実行計画をたてる
課題が分析できたら課題解決の実行計画を立てていきましょう。
解決方法として「標準化、排除、代替」の3つの方法が考えられます。
より具体的な解決方法を策定するためにコミュニケーションを密に取りながら進めていくと良いでしょう。
抽象的な内容ではなく、実現可能な具体的な方法を考えることが重要です。
4.計画の実行
計画が立てられたら、実行に移しましょう。
初めは規模が小さく、実施しやすく効果が見込める施策を優先して実行します。
成功事例が積み重なれば、次の計画にも移りやすくなりノウハウも蓄積されます。
5.内容の振り返り
計画を実行したら内容を振り返ります。
新たな改善点が見つかったり次の計画に活かせたりします。
振り返りをおこなう際は以下のポイントを重視すると良いでしょう。
- 課題は解決したか
- どのような効果がみられたか
- 計画通りに進行できたか
- 悪影響は生じなかったか
- 想定効果とズレは生じなかったか
より良い結果が生み出せるように、一つひとつを深堀しながら質の高い改善を検討していきましょう。
6.計画改善
振り返りと分析ができたら、さらある業務改善の計画を立てていきます。
何度も繰り返すことで質の高い業務改善をおこなえるからです。
一度目の計画実行でどのような効果が起きたのかを細かくメモしておくと新しい業務改善のアイデアに繋がる場合もあるので、期待していた結果も偶然生まれた結果も記録に残しておくと良いでしょう。
魅力発信による介護業務改善例
介護業界の魅力発信は介護施設や事業所において重要な取り組みです。
介護職の魅力や業務の意義を広く周知することで、人材確保や定着を図りサービスの質の向上につなげます。
具体的には、介護の魅力をアピールする広報活動やイベント開催、社内外での成功事例の共有などが挙げられます。
また、現場で働く職員が誇りを持ちモチベーションが高まることで、業務効率化やサービス提供の向上にもつながるでしょう。
以下で紹介する2つは、実際におこなわれた魅力発信の事例ですので参考にしてください。
プロモーションビデオの作成
プロモーションビデオの作成では、介護の正しい情報や親しみやすさを伝えます。
映像を通して介護業界を知り、若い世代の介護分野への参入を促進するためです。
実際に行われた例では「小学生・中学生・高校生」向けと、それぞれの年代に合ったストーリーが作られました。
結果として、若い世代の福祉や介護への興味・関心を高められました。
福祉体験学習の実施
福祉体験学習では、高校生が中心となって「介護」や「高齢者への関わり方」に関心をもてるようなプログラムを作成しました。
地域ぐるみで実施することで中学生への関心や地元での就労意欲を高めることを目的としています。
実際に行われた事例で中学生へアンケートを行ったところ「福祉の仕事をやってみたい」と思う中学生が42%から53%まで増加しました。
元気高齢者の活用による介護業務改善例
元気高齢者の活用は、元気な高齢者が自らの経験や能力を活かして施設内での様々な活動や支援を行う取り組みです。
職員の負担軽減や利用者へのサービス向上につながります。
具体的には、以下のような例が挙げられます。
- 元気高齢者によるレクリエーションの企画や運営
- 利用者同士のコミュニティ形成の支援
- 施設内外でのイベントのサポート
また、元気高齢者の積極的な参加は施設内の雰囲気や活気を高めるだけでなく、利用者全体の生活の質を向上させます。
以下で紹介する2つは、実際におこなわれた元気高齢者活用の事例です。
元気高齢者による介護助手事業の効果検証
三重県内の介護助手導入施設では、元気高齢者による介護助手事業の効果検証をおこないました。
元気高齢者が「介護人材の確保」「高齢者就労」「介護予防」に有効的であるかを検証することが目的です。
実際に行われた検証では、すべてにおいて有効であると示されました。
さらに元気高齢者介護助手の導入によって介護職員の離職率の低下にも成功しています。
元気高齢者のマッチング支援
元気高齢者のマッチング支援では、県の複数事業が連携して介護施設と元気高齢者のマッチングを推進しました。
元気高齢者の生きがいづくりや知識の活用とともに、介護現場における負担軽減につなげるためです。
実際におこなわれた例では、取り組みを通じて新たなマッチングにあたっての課題も明らかになりました。
テクノロジーによる介護業務改善例
テクノロジーは、介護の現場で革新的な変化をもたらす重要な取り組みです。
ICT(情報通信技術)やロボティクスの活用により、介護施設や事業所では業務効率化やサービスの向上が図られます。
テクノロジーの導入により職員の負担が軽減され、より効率的かつ質の高いサービス提供が期待できるでしょう。
以下で紹介する2つは、実際におこなわれたテクノロジー活用の事例です。
AIを活用したケアプラン点検支援
AIの活用事例では、AIのケアプランを参考にした見直しがおこなわれました。
従来のケアマネジャーが作成するケアプランは、経験や技術による部分が大きく自立支援や重度化防止につながっているかを判断しがたかったためです。
具体的な内容としては、AIが提案したプランについて「なぜAIがこのプランを提案したか」を話し合いました。
結果として、ケアマネジャーからは「このような考え方もあると気づかされた」という意見が活発に交わされました。
介護オープンラボの開催
介護オープラボの事例では、介護に携わる人だけではなくICT系の学生や企業も集まるイベントをおこないました。
イベントには自治体や介護施設団体も参加し、合計で約50名が集まりました。
具体的な内容としては、以下の2つです。
- 介護職のやりがいや志の発信
- 参加者の議論
地域の多様な人材が結びつくネットワークが形成され、介護を取り巻く将来の可能性や魅力が広がりました。
地域別の介護業務改善例
各自治体でも介護業務改善のための取り組みがおこなわれています。
特に取り組みが著しいのは以下7つの自治体です。
- 神奈川県
- 福島県
- 宮城県
- 三重県
- 熊本県
- 横浜市
- 北九州市
以下でそれぞれの自治体がどのような取り組みをおこなったのか紹介します。
神奈川県の介護業務改善例
神奈川県で「神奈川県介護現場革新会議」を設置して5つのテーマについて取り組みました。
具体的な取り組みの事例は以下のとおりです。
取り組み | 具体的な内容 |
---|---|
施設でのロボット・ICT実証実験 | 介護機器を試行的に導入して効果検証 |
大学と連携した音楽活動のマニュアル化 | マニュアルを使用した研修をおこなって施設での音楽活動をサポート |
介護施設用記録ソフトの開発に向けた協働 | ソフトウェア会社・介護保険施設・行政の3者で現場の実態に合わせたソフトウェア開発を実施 |
AIを活用したケアプラン点検支援の試行 | ケアマネジャーとAIのケアプランを比較・検討をおこない、ケアプラン作成技術のレベルアップ |
かながわ感動介護大賞 | 介護にまつわる感動的なエピソードを募集して外部へ情報発信 |
福島県の介護業務改善例
福島県では「介護職の定着・幅広い介護人材の確保・介護サービスの質向上」を目指して5つの取り組みをおこないました。
具体的な取り組みの事例は以下のとおりです。
取り組み | 具体的な内容 |
---|---|
若手経営者による業務仕分け | ICTを用いた業務改善の実証 |
ロボット・ICT等の実証 | 介護職員の負担軽減と作業効率化を実証 |
センサーを活用した高齢者の見守りに関する検証 | 施設と研究機関のマッチングを主導して産学官連携の仕組みを形成 |
元気高齢者と介護施設のマッチング支援 | 17の施設にてマッチングが実現し、生産性の向上が図られた |
介護オープンラボの開催 | 介護職員とICT系の学生・企業などによる議論の開催 |
宮城県の介護業務改善例
宮城県は2025年に4,755名もの介護人材不足になると言われています。
現状を打破するべく、以下4つの取り組みをおこないました。
取り組み | 具体的な内容 |
---|---|
物品調達の合理化 | おうつの共同購入を実施し、約3割のコストを削減 |
専門性の高い介護職員のキャリアパス構築 | ワークショップの開催 |
勤務シフト表自動作成システムの導入 | シフト作成担当者5名のシフト作成業務時間を4分の1に削減 |
インカムの導入 | 情報共有をスピーディーにするためにインカムを導入し、連携効果がみられた |
三重県の介護業務改善例
宮城県と同様で三重県も介護人材の不足は深刻な状況にあります。
状況を打破すべく、三重県では3つの取り組みをおこないました。
取り組み | 具体的な内容 |
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介護助手の効果的な導入方法の検討 | 三重県内の44か所の介護助手導入施設にアンケートを実施し、導入実態や施設への波及効果を明らかにした |
インカムを活用した介護業務の負担軽減 | ケアをおこないながらも情報伝達が迅速になり、処置開始までの時間も短縮 |
介護現場の魅力発信の強化 | 動画や冊子の作成、配布・Youtube、新聞への掲載 |
熊本県の介護業務改善例
熊本県は平成28年に発生した熊本地震の影響もあり、全産業で人材確保が厳しい状況にあります。
さらに今後の人口減少を考えると、介護サービスの人材確保はとても困難になると予想されます。
そこで熊本県では4つの取り組みをおこないました。
取り組み | 具体的な内容 |
---|---|
熊本の介護職員が語る言葉からの介護の魅力発信 | 介護職員の言葉をアート作品として制作・展示。 |
業務分析を踏まえた介護ロボット・ICT・元気高齢者活用モデルの構築 | モデル施設を選定して取り組みを実施 |
福祉高校と連携した学校現場への働きかけ | 学生が介護に関心をもてるような取り組みを地域ぐるみで実施 |
いきがい就労の促進による地域ぐるみでの介護助手確保 | 介護施設と元気高齢者のマッチングを推進 |
横浜市の介護業務改善例
横浜市では業務改善による生産性向上と新たな介護人材の確保を目指して、厚生労働省・横浜市・関係団体が一丸となって取り組みをおこないました。
具体的な取り組みの事例は以下のとおりです。
取り組み | 具体的な内容 |
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業務の標準化・簡素化・平準化 | 2.5:1の人員配置を実現 |
ICTを活用したシステム導入 | 介護総合支援システムを独自開発して実証 |
携帯翻訳機による外国人のコミュニケーション支援 | インドネシア人・ベトナム人・中国人の職員に携帯翻訳機を導入して効果を検証 |
eラーニングによる介護知識、技能、介護の日本語等の教育支援 | ベトナム人職員にeラーニングシステムを導入して学習効果を検証 |
外国版「介護の仕事のPRビデオの作成」 | 外国人介護職員向けのプロモーションビデオを作成 |
北九州市の介護業務改善例
北九州市では、取り組みを通じて「北九州モデル」を具体化させ、今後は市内に広げていくとしています。
具体的な取り組み事例は、以下のとおりです。
取り組み | 具体的な内容 |
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北九州モデルの具体化 | 介護記録システムと見守りセンサー等のプラットフォーム化の実現 |
人とテクノロジーが融合して実現する先進的介護ワークショップの開催 | 行政に対する提言を取りまとめるワークショップの開催 |
介護ロボットマスター育成講習の開催 | 習得レベルに応じた段階的な講習を実施 |
介護業務改善における注意点
介護業務改善における注意点も理解しいておきましょう。
業務改善を図るのは良いですが、集中するあまりに周りが見えなくなるケースもあります。
とくに注意しておきたいのは以下の2つです。
- 職員への負担を減らす
- やみくもにツールを導入しない
より働きやすい環境にするために、2つを確認しておきましょう。
職員への負担を減らす
業務改善への取り組みは、ときに職員への負担になります。
なぜなら取り組みを実施している最中は実施したり改善したりの繰り返しになるからです。
そのため、取り組みが長期化して定着しないと職員への負担となってしまいます。
介護業務改善の目的は働きやすい環境づくりのためなので、本末転倒にならないように注意しましょう。
やみくもにツールを導入しない
介護業務改善のためとはいえ、ツールを導入すれば良いわけではありません。
目的に沿わないツールでは、単に使い方を覚える手間が増えてしまうだけで業務の効率を下げます。
そのため、ツールやシステムは目的を明確にしてから導入するようにしましょう。
以下の記事では介護業務やサービスを効率化するための介護DX導入のメリットやデメリットについて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
まとめ|介護業務の改善をチームで取り組みましょう
本記事では、介護業務改善のポイントや手順を解説しました。
さまざまな事例も参考にしながら、ぜひ業務改善の方法を検討してみてください。
しかしどのケースでも大切なのがチームワークです。
チームで連携しなければどのようなアイデアも実行できません。
そのために、まずは現状のチームワークを強化するところから始めてみるのも良いでしょう。
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