昨今、工場のIT化が推進されています。
しかしIT化を導入する上で以下のような悩みを持つ人もいるのではないでしょうか。
- 工場のITについて理解できていない
- どのようなIT化を導入すべきかわからない
- IT化によるメリットがわからない
本記事では上記のような悩みを持つ人に向けた「工場IT化のメリットや事例」について解説します。
今後の工場の成長を伸ばすためにも、ぜひ参考にしてください。
工場のITとDX
工場のIT化と聞いて「DX」という言葉を思い浮かべる人も多いでしょう。
しかしそれぞれの言葉について理解できていない人も多いのではないでしょうか。
まずは工場IT化の基礎知識として「IT」と「DX」について解説します。
IT化とは?
IT(Information Technology)とは、コンピュータとネットワーク技術の総称で、IT化とはIT技術を日常や仕事に取り入れることを指します。
簡単なものであればパソコンやLINEなどのツールで顧客管理をスムーズにすることもIT化の一種です。
工場のIT化でいえば、作業用ロボットの導入などが代表的な例となります。
IT技術の導入で作業員の安全性向上や時間の削減になるため、多くの工場が注目しています。
DX化とは?
DX(Digital Transformation)はIT技術の導入によって、企業の仕組みを変革させる意味をもちます。
日本では2018年から経済産業省が推進しており「DXレポート」や「DX推進ガイドライン」を発表しました。
世界でもDX推進の流れが強くなっており、工場だけに留まらない多くの企業の課題となっています。
DXとITの違い
DXとITは、似ているようで異なる概念です。
ITとは、「Information Technology」の略で、日本語では「情報技術」と訳されます。ITは、コンピュータや通信技術などを活用して、情報処理や情報通信を行う技術体系を指します。
一方、DXとは、「Digital Transformation」の略で、日本語では「デジタル変革」と訳されます。DXは、ITを活用して、ビジネスモデルや組織、人材などを変革し、新たな価値を生み出すことを指します。
ITとDXの違い
項目 | IT | DX |
---|---|---|
目的 | 情報処理や情報通信の効率化 | ビジネスモデルや組織の変革 |
範囲 | 技術的な手段 | 経営戦略 |
主な効果 | 業務効率化、コスト削減 | 新たな価値の創造、競争力強化 |
代表的な取り組み | 業務システムの導入、データ分析 | デジタルマーケティング、サブスクリプションサービス |
ITはDXの手段
ITは、DXを実現するための手段の一つです。DXを成功させるためには、単にIT技術を導入するだけでなく、経営戦略に沿って、ビジネスモデルや組織、人材を変革していくことが重要です。
工場のDXについては、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
日本の工場のIT化の現状
日本の工場は諸外国に比べてIT化が遅れています。
諸外国と比べると後手にまわってしまっているのが現状です。
日本の工場のIT化が遅れる理由としては、以下の2つがあります。
- 資金力
- 知識不足
多くの工場は上記の理由でIT化を進められていません。
なぜそれぞれが弊害になるのかについて、以下で解説します。
資金力による遅れ
日本の工場では、IT化導入のための資金力がありません。
大手メーカーの工場であれば様々なツールを導入できますが、中小企業の工場では新たなツールを導入するための費用がないのです。
また、経営層によるITへの理解も関係しています。
経営層のIT導入への理解がなければ、導入に対しての予算を割けないでしょう。
これらの要因が重なり、IT化のハードルとなっています。
IT導入のための資金を捻出するために役立つ、工場のコスト削減方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
知識不足による遅れ
IT化への知識不足も導入が遅れている理由です。
IT化を導入して何がどのように便利になるのかが具体的に浮かばないと、そこに予算を割けないからです。
また、導入をしたとしてもITツールを使いこなせる人材が多くありません。
具体的なメリットや導入した後の未来が想像できないために、IT化をためらってしまう工場が多いのです。
工場にITを導入するメリット
工場にITを導入するメリットについて、具体的にイメージできている人は少ないでしょう。
そこで、工場にITを導入するメリットについて解説します。
主なメリットは以下の4つです。
- 生産性の向上
- 人件費の削除
- 業務の標準化
- 技術継承の属人化を排除
それぞれのメリットについて以下で解説します。
生産性の向上
工場にITを導入すれば生産性の向上に役立ちます。
情報技術による作業の短縮や生産数を増やせるからです。
たとえば、生産管理システムなどがあります。
生産工程を管理することで作業工程の改善をおこない、作業効率を向上させられます。
工場の生産性向上の必要性や、ITツール導入も含めた生産性向上実現のステップについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
人件費の削減
工場にITを導入すれば、人件費・製造リソースの削減にも役立ちます。
生産管理システムなどを導入して管理すれば、無駄な手間を省けるからです。
また、人ではなく機械ができる部分をロボットなどに任せれば人件費の削減も可能となります。
とくに工場の働き手は減少傾向にあるので、一番向き合わなければいけない課題でしょう。
今後の向上の課題を解決するためにもIT化を導入する必要があるのです。
業務の標準化
IT導入による業務標準化とは、ITツールを活用して業務手順を統一し、効率化、品質向上、コスト削減を目指す取り組みです。
IT導入による業務標準化には、以下のメリットがあります。
- 業務効率化: 手順書の電子化や自動化により、作業時間やコストを削減できます。
- 品質向上: 作業手順の統一により、品質が安定し、ミスが減少します。
- 情報共有の迅速化: 情報共有が迅速化し、意思決定が迅速化されます。
- コンプライアンスの強化: 標準化された手順により、コンプライアンス違反のリスクを低減できます。
技術継承の属人化を排除
工場の技術継承においてもIT化が役立ちます。
これまでの工場での技術継承は、熟練作業者が新しい人材に教えていくという形でおこなわれていました。
そのため、覚えるまでに時間がかかったり教えている間に作業が止まってしまったりするという課題があったのです。
IT化によって技術をマニュアル化すれば、人手を割くことなく技術承継をおこなえるようになります。
また、機械によって技術を教えられるのでこれまで「1対1」で教えていたものが「1対複数」と、効率的になるでしょう。
大手工場のIT化導入事例
実際の工場のIT化をイメージできるように、大手工場の事例を2つ紹介します。
- 株式会社LIXIL
- フレックスリンク
いずれもIT化導入で成功した事例です。
それぞれを参考にして、自社にどのようなIT化が適しているかを検討してみてください。
株式会社LIXIL|販売管理システムを導入
株式会社LIXILは、建設材料や住宅設備機器の業界大手です。
LIXILでは販売管理をおこなうために新しいシステムの導入をおこないました。
元々は営業担当者が始業前に販売管理システムにアクセスし、売上目標と実績の差を確認して計画を立てる形をおこなっていましたが、システムが老朽化していたためにアプリケーションによっては処理が間に合わないものもあったのです。
そこでシステムの性能向上と短期稼働を目的に導入したのが富士通の「PRIMEFLEX for Oracle Database」です。
PRIMEFLEX for Oracle Databaseは、富士通のテクノロジーとノウハウでOracle Databaseを高速化し、圧倒的なパフォーマンスを実現する垂直統合型データベースシステムです。サーバ、ストレージ、ネットワーク機器を組み合わせ、データベース性能を最適化するための設計・チューニングを実施済のシステムのため、安全でスピーディな導入が実現できます。
引用元:PRIMEFLEX for Oracle Database 高速Oracle Database基盤 Fujitsu Integrated System PRIMEFLEX for Oracle Database – 富士通 : 富士通
システムの導入によりバッチ処理時間が半分以下になり、始業前に実績データを営業担当者に提供できるようになりました。
フレックスリンク|国産のRPAソフトを導入
フレックスリンクでは、製造業務の遅延や手作業によるミスの発生が課題となっていました。
そこで事務的な作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入。
RPAの導入により、従来では2時間かかっていた月次報告書の作成をたった15秒に短縮することに成功しています。
工場IT化のために知っておくべきワード一覧
工場IT化を導入するには、専門的なワードについて理解しておかなければいけません。
とくにIT化が進んでいる昨今では、続々と新しい言葉が生まれています。
以下で工場IT化で必要なワードを紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
どのようなIT知識が自社に必要かも理解できるようになるでしょう。
ウェアラブル・デバイス
「ウェアラブル・デバイス」は、スマートウォッチのような身に付けられる端末です。
工場ではウォッチではなくスマートグラスという眼鏡型の端末を装着する方法が多く導入されています。
スマートグラスでは遠隔地からの映像を共有することで現場作業員の支援ができます。
また、熟練作業員がウェアラブル・デバイスを装着して新人作業員を指導することも可能です。
デジタルツイン
デジタルツインは、現実にある生産設備やオペレーションをデジタル空間に再現する技術です。
工場そのものをコピーできるので、デジタル空間での稼働シミュレーションをおこなえます。
たとえば、稼働シミュレーションをおこなって将来的に起きうるトラブルを予測したり、データを取得して業務の効率化に役立てられます。
エッジコンピューティング
エッジコンピューティングは端末の近くでサーバーを分配配置するネットワーク技法です。
多くの方は「クラウド」を連想してしまうかもしれませんが、エッジコンピューティングとクラウドは別物と考えてください。
クラウドは、大容量のデータを送受信するために時間がかかるネックがありました。しかし、しかし、エッジコンピューティングではあらかじめデータ処理をして必要な情報だけを送信します。
これによりクラウド・サーバーのデータ処理時間を軽減することができるようになりました。
AI
AI(人工知能)はこれからの工場技術で必要になる知識です。
工場だけではなく、多くの企業がAIによるシステムを導入しています。
工場においては、とくに工程の自動化で人手不足が解消することが期待されています。
たとえば、AIによるディープラーニングをおこなえば、人に頼らずに不良品の検知が可能です。
また、AIによって効率的なオペレーションを組み立てることもできるでしょう。
人手不足の解消・生産性向上どちらにもAI技術は役立ちます。
RPA
RPA(Robotic Process Automatio)はロボットによる業務の自動化を指します。
製造ロボットの導入によって、人手不足を解消できます。
ロボットを導入することで得られる主なメリットは以下の3つです。
- 人が作業する手間が削減
- ヒューマンエラーの軽減
- 人ができない作業が可能(作業員の安全性向上)
ロボットの導入により品質も高まりますし、これまでできなかった作業も可能になります。
今後の工場にとっては必要不可欠の存在となるでしょう。
メタバース
メタバースはインターネット上の仮想空間を指す言葉です。
主にゲーム業界や観光業界で使われていました。
代表的な例として「Fortnite」「ポケモンGO」「メタバース渋谷」「メタバース沖縄」などがあります。
工場でもこの技術を応用できるのです。
たとえば、製品や企業のモデリングを仮想世界でおこなうことで、現実世界と同じように商品説明や企業説明ができるようになります。
さらに、仮想空間内であれば製品開発の際に試作品を何度も作る必要がありません。仮想空間内で修正できるので、試作品へのコストを抑えられます。
今後はメタバースを利用した新たな応用技術も生まれてくるでしょう。
IoB
IoBは「Internet of Bodies」の略語で「身体のインターネット」を意味します。
または「Internet of Behavior」で「行動のインターネット」という意味があります。
それぞれの違いは、以下のとおりです。
- Internet of Bodies…センサーを身体に取り付けることで、血圧や心拍といった生体情報を管理
- Internet of Behavior…動きの情報を管理・分析
工場において導入できるのは「Internet of Behavior」です。
動きの情報を管理・分析できるので、作業効率の改善や安全性の向上に活かせます。
電子インボイス
電子インボイスは、請求書などを電子データにまとめて管理することです。
これまで紙で扱っていたものをデータにすることで、書類の紛失やミスを防げます。
さらに書類の管理も楽になります。
とくに2023年10月1日から開始されたインボイスに伴って、電子化を進める企業が多くなりました。
HRテック
HRテックは「Human Resource」と「Technology」を組み合わせた略語で「テクノロジーを活用して人事管理をおこなう」ことを意味します。
たとえば以下のような活用方法があります。
活用例 | 従来の課題 |
---|---|
AIの人事管理によって公平かつ効率的な評価 | 人事個人の印象や感情が混じってしまう |
AIによる勤怠管理 | 入力や計算の手間がかかってしまう |
AIによる新規人材評価 | 面接対象者の絞り込みが困難 |
今後は工場にとって人材不足が大きな課題になると考えられるので、人事問題の解決方法も考えておくべきです。
ワークフローシステム
ワークフローシステムは、業務の流れを電子化するシステムです。
プロジェクトの流れを電子化できれば、問題点の確認や人材配置などを効率よくおこなえます。
工程の修正も簡単におこなえるので、一つひとつの動きがスムーズになります。
まとめ:工場のIT化を改めて見直しましょう
今後の工場には必ずIT化が求められます。むしろITを導入していかなければ今後残っていくのは困難でしょう。
ぜひ今少しでも工場の生産性や存続に悩まれているなら、今回の記事を参考に工場のIT化を進めてください。
ただし、IT技術を導入するとなれば作業員の理解も必要です。
理解がないままツールだけを導入してもうまく活用できません。
ですから、工場へのIT化導入の前にチーム力を高めることも意識してください。
工場が一丸となって取り組めば、より効率的にIT化が進みます。
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