人材不足が叫ばれている製造業では、DX化への注目が高まっています。
しかし、DX化を推進しようとしても、予算や人材、技術の問題で進められない企業もあるでしょう。
そこで本記事では、製造業DX化に使える補助金・助成金を紹介します。
募集要項を満たすものがあれば、積極的に使いましょう。
製造業DX化の現状
製造業では、昨今DX化による生産性向上が推進されています。
製造業がDX化に取り組むことで、生産性の向上に期待できるからです。
しかし、製造業DX化は、スムーズに進んでいないのが現状です。
製造業DX化の課題
製造業DX化が進まないのは、企業や産業の課題にあります。
最も大きな課題は、人材不足です。
製造業の就業者は年々少なくなっており、少子高齢化も進んでいます。
だからこそDX化を進めるべきなのですが、IT技術を使いこなせる若い人材がいないのも現状です。
そのため、製造業のDX化が進まないのです。
また、DX化を進めようとすれば、設備などに多額の費用がかかります。
これらの費用を捻出できないことも、製造業がDXを進められない課題と言えるでしょう。
DX化の課題でもある製造業の人手不足については以下の記事でも詳しく解説しています。
製造業のDX化におすすめの補助金・助成金一覧
製造業でDX化が進まない原因として、「予算」の問題がありますが、補助金や助成金の制度を利用すれば、予算が少ない企業でも、DX化を進められるかもしれません。
とくに製造業のDX化におすすめの補助金、助成金は以下の5つです。
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
- 事業再構築補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- キャリアアップ助成金
上記の方法を利用すれば、国から一定額の補助金や助成金を受け取れます。
対象経費になるものは、補助金や助成金によって異なるので、以下で具体的に解説します。
なお、上記の補助金・助成金は2023年のものであるため、時期によっては利用できないケースがありますので最新の情報を常に確認しておきましょう。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、正式名称「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と呼ばれるもので、中小企業が生産性向上に関わるサービスの開発や改善を行うための設備投資に利用できる補助金です。
対象となる経費は類型によって異なりますが、主に以下の経費に使用できます。
- 機械装置
- システム構築費
- 技術導入費
- 広告宣伝費
- 専門家経費
2023年現在でも毎年公募されている補助金なので、最新の情報も確認しておきましょう。
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する際の経費の一部を補助してくれるものです。
たとえば、システム導入やシステムの構築費などに利用できます。
類型によって異なりますが、補助額は最大で450万円です。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、社会の変化に対応するための取り組みを支援する補助金です。
成長枠を始めとした、7種類の枠があります。
- 成長枠…補助上限7,000万円
- グリーン成長枠(エントリー)…補助上限1億円
- グリーン成長枠(スタンダード)…補助上限1.5億円
- 卒業促進枠…補助上限1.5億円
- 大規模賃金引上促進枠…補助上限3,000万円
- 産業構造転換枠…補助上限7,000万円
- 物価高騰対策・回復再生応援枠…3,000万円
※従業員の人数によって上限額が異なる枠もあります
ただし、事業再構築補助金はコロナ時代の変化促進を支援するものであるため、2024年以降も公募されるかは、今のところ不明です。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、商工会・商工会議所が販路開拓を支援する補助金制度です。
販路開拓を目的としているため、以下のような費用が対象になります。
- チラシ
- パンフレット
- ホームページ
- web広告
- 店舗改装
- 新商品開発費
ただし、製造業の場合は、常時使用する従業員の数が20人以下でなければいけません。
補助上限額は通常枠で50万円、賃金引上げ枠で200万円です。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、「有期雇用労働者・短時間労働者:派遣労働者」などの非正規雇用の労働者のキャリアアップや正社員化などの取り組みを実施した事業主を支援する目的の助成金です。
DX化に直接関わる助成金ではありませんが、DX推進の人員体制を強化したり、賃上げを行ったりする場合にも活用できます。
ただし、以下の条件を満たす必要があります。
- 雇用保険適用事業所の事業主である
- 事業所ごとにキャリアアップ管理者を配置している
- キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の認定を受けている
- 対象労働者について、労働条件や勤務状況、賃金支払い状況などがわかる書類(就業規則)を作成・改定している
- キャリアアップ計画期間中に、非正規雇用労働者のキャリアアップに関する取り組みを実施している
上限額は、以下のとおりです。
有期雇用労働者 | 無期雇用労働者 | |
中小企業 | 57万円 | 28万5,000円 |
大企業 | 42万7,500円 | 21万3,750円 |
※正社員化コースの一人あたりの助成額
各自治体による製造業に使える補助金・助成金も確認
各自治体でも、製造業のDX化に利用できる補助金・助成金があります。
以下は、過去に実施された代表的な例なので、事業所のある自治体で利用できる補助金・助成金がないか確認してみてください。
東京都:DXリスキリング助成金
DXリスキリング助成金は、公益財団法人東京しごと財団が提供しているDXに関する職業訓練を集合またはeラーニングなどを利用した際にかかる経費を助成するものです。
申請要件は、以下のとおりです。
- 都内に本社又は事業所(支店・営業所等)の登記がある
- 訓練に要する経費を従業員に負担させていない
- 助成を受けようとする訓練について国又は地方公共団体から助成を受けていない
助成額は助成対象経費の3分の2で、上限額は64万円/社・年度です。
2024年2月まで申請を受け付けています。
企業にリスキング教育が必要な理由や、リスキング導入のステップについては、以下の記事で詳しく解説しています。
大阪府:意欲ある事業者経営・技術支援補助金について
大阪府の八尾市では、新事業展開、IT・DX化の推進に取り組む中小企業を対象に、経費の一部の補助を行っています。
DX化に関わる新事業展開、IT・DX化推進枠では、以下の取り組みへの補助を受けられます。
- 新製品の開発
- 新分野進出
- 技術革新
- IT化・DX推進
- コーポレートブランディング
補助上限は250万円で、補助率は補助対象経費の1/2でした。
山口県:デジタル人材育成支援補助金
山口県では「デジタル人材育成支援補助金」として、やまぐち産業振興財団が中小企業のDX推進を目的として補助をおこなっています。
デジタル技術に関する短期民間研修など、従業員が受けた際の費用を一部補助してくれます。
補助上限は1人あたり3万円で、1社あたり150万円まで。
補助率は3/10以内。
2024年2月末まで申請を受け付けています。
埼玉県富士見市:富士見市中小企業チャレンジ支援事業補助金
埼玉県富士見市がおこなっている「富士見市中小企業チャレンジ支援事業補助金」は、富士見市内に本社または事業所のある中小企業のうち、要件を満たす企業に対して補助金が支給される制度です。
補助対象事業・補助率・補助上限は、以下のとおりです。
補助対象事業 | 補助率 | 補助限度額 |
経営改善事業 | 1/3以内 | 30万円 |
研究開発事業 | 1/2以内 | 10万円 |
人材育成事業 | 1/2以内 | 1名につき2万円 |
販路開拓事業 | 1/3以内 | 5万円 |
DX化事業 | 1/2以内 | 5万~50万円 ※事業によって異なる |
経営革新事業 | – | 5万円 |
受け付けは、予算終了までとなっています。
製造業のDX化で補助金を利用する流れ
製造業のDX化で補助金を利用する流れは、以下のとおりです。
- 補助金の調査
- 必要書類の準備・申請
- 採択結果を待つ
- 事業開始
- 実績報告
5つの項目それぞれで何をおこなうのか、以下で具体的に解説します。
1.補助金の調査
まずは、先述した補助金や助成金を参考に、自社で使えるものがあるか調べましょう。
応募条件によっては、募集要件を満たせていない場合があるので、必ず確認してください。
2.必要書類の準備・申請
利用する補助金や助成金が決まったら、必要書類を整えて申請をおこないます。
主に必要となる書類は、以下のとおりです。
- 申請書
- 事業計画書
- 決算関係書類
- 印鑑証明書
- 納税証明書
ただし、必要書類は申請する補助金や助成金によって異なるので、公式サイトで確認しておきましょう。
3.採択結果を待つ
申請の書類を提出したら、採択結果を待ちましょう。
ここで注意したいのが、採択されても受給できるとは限らない点です。
事業計画に沿ったサービスの導入や製品の開発をしなければ、受給できない可能性があります。
4.事業開始
上記で解説したように、採択されたら事業計画にのっとったとおりの事業を進めていきましょう。
仮に、途中で事業内容を変更したり記載していない取り組みをおこなったりすると、支給されません。
5.実績報告
DX化への取り組みが完了し、効果の検証ができたら、事務局に実績報告の書類を提出します。
その後、実績報告の状況に合わせて補助金額が決定し、交付される流れです。
ただし、補助金や助成金によっては特殊な手続きが必要になる場合があるので、必ず募集要項を確認してください。
製造業のDX化で補助金を利用する際の注意点
製造業のDX化で補助金を利用する際は、以下の注意点を知っておきましょう。
- 申請期間
- 補助金・助成金は原則後払い
- 審査に通らなければ受給できない
- ある程度の資金が必要
それぞれの注意点について、以下で具体的に解説します。
申請期間
補助金を利用する際は、必ず申請期間を確認してください。
長期間の申請を設けている制度もありますが、なかには数日しかなかったり、その年度しかおこなっていなかったりする補助金もあります。
必要書類を揃えていても申請期間を過ぎていれば応募できないので、必ず申請期間に間に合うように書類の作成、提出をおこなってください。
補助金・助成金は原則後払い
補助金や助成金は、原則後払いです。
計画通りに事業が終了し、検査が行われた後に入金されます。
そのため、実際に事業を始める際には自己資金でおこなわなければいけません。
審査に通らなければ受給できない
補助金や助成金は、審査に通らなければ受給できません。
提出書類の不備や記入漏れがあったり、募集要項を満たしていなかったりする場合は審査に通らないので注意しましょう。
ある程度の資金が必要
補助金や助成金は、事業の経費を満額支給してくれるものではありません。
多くの場合、1/2や2/3などの補助率です。
そのため、資金がゼロの状態で事業を始めることはできません。
資金がなくDX化を進めたい場合は、銀行などから融資を受けて資金を準備しましょう。
資金準備に役立つ製造業でのコスト削減については、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらも合わせて参考にしてください。
DX化と同時に業務改善も検討しましょう
製造業のDX化推進のための補助金について解説しましたが、DX化の前に忘れてはならないことがあります。
今できる業務改善です。
業務改善をして社内環境に満足できる形にしなければ、どれだけDX化を推進しようとしても、社員からの協力を得られません。
補助金を活用してDX化を進めるのは、それからでも遅くはないので、まずは今すぐにできる社内環境の改善も考えてみてください。
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