工場において作業の効率化は、最も重要な課題です。
とはいえ「効率化のための改善はすでにやりつくした」「問題点はないように見える」とお悩みの経営者の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、より実践的な改善案を10個お伝えします。
また、改善によって実際に作業の効率化に成功した事例を紹介します。
工場の効率化は「手間がかかること」「無駄なこと」「危険なこと」などマイナス部分を改善する小さな取り組みから始まります。
改善のための取り組みは、積み重ねが大切です。
お伝えしたアイディアや事例が、工場効率化、競争力強化のヒントになれば幸いです。
工場効率化のための小さな改善案10選
ここからは、工場効率化のための小さな改善案を10個お伝えします。
もちろん個々の工場の状況や製品によって、取り入れられるアイディアは違ってきます。
ぜひ考え方のヒントにしていただき、自社に適したかたちで活用してください。
1.共有ボードの設置
生産ラインの状況が一目でわかるような、共有ボードを使っていますか?
例えば、班ごとに当日の目標生産数、進捗や問題事項をホワイトボードに記入しておけば、その日のうちにチーム全員で情報を共有できます。
シフト勤務の従業員がいても、ボードを見るだけで引継ぎが完了しますよね。
シンプルな方法ですが、導入コストがかからず効果的なのでおすすめです。
2.10分のデイリーミーティング
毎朝10分のミーティングをすることで、各メンバーが前日の進捗や当日の目標などを共有できます。
コミュニケーションが活性化し、お互いに協力して作業を進められるようになります。
また、ミーティングのなかから業務の改善点が見つかる場合もあります。
日頃の作業で不便だと思う点、気づいた点について自由に発言できる場にしてはいかがでしょうか。
3.作業環境の整理
作業に必要ない道具が出しっぱなしになっていたり、必要な資材がすぐに見当たらなかったりすれば、当然効率が低下します。
それだけでなく、転倒など思わぬケガや事故の原因になってしまいます。
使い終わった道具は所定の場所に戻す、必要な資材は取り出しやすく収納するなど、作業現場を整理する意識を浸透させることが大切です。
4.スキルシェアの促進
従業員が複数のスキルを持っていると柔軟な人員配置が可能になり、作業効率が上がります。
従業員がスキルや知識を発信する社内ブログや、社内ワークショップの開催、クロストレーニングを企画するのがおすすめです。
お互いの専門知識を学び合い、工場全体のスキル向上に寄与するでしょう。
5.自動化とロボットの導入
工場の作業効率化に有効なのは、自動化やロボットの導入です。
特に単純かつ繰り返しの多い作業に自動化やロボットを取り入れてはいかがでしょうか。
ロボットは集中力が低下することも、疲労することもありません。
自動化とロボットの導入によってヒューマンエラを防止できます。
貴重な人材はより高度な仕事に従事できるようになり、工場作業効率の向上が期待できます。
6.省エネルギー設備の導入
コスト削減に有効なのは、エネルギー効率の良い機器の導入や再生可能エネルギーの導入です。
例えば、LED電球を使用する、太陽光発電を活用するなどの方法があります。
導入コストはかかってしまいますが、一旦導入すれば消費電力を抑えるので持続的にコストを削減できます。
さらに、環境に配慮したクリーンな工場をアピールできるメリットもあります。
7.デジタル化
重要な文書やファイル、作業マニュアルなど紙ベースの記録をデジタル化すると作業を効率化できます。
データはクラウドサービスにアップロードし、従業員と共有するのがおすすめです。
書類を探したり、保管したりする時間やコストを削減できます。
必要としている人が、必要なときにいつでも情報を検索できて、アクセスが容易になります。
工場のデジタル化については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
8.作業手順の視覚化
作業手順の視覚化は、個々の従業員の効率化向上に役立ちます。
例えば、作業ステーションに作業手順のチャートや写真を掲示するのはいかがでしょうか。
また、機械の操作マニュアルを動画にするのも良いでしょう。
文章による説明を読むよりも、視覚化された情報はより直感的に理解できます。
これにより個々の従業員のミスや混乱が減少し、作業効率向上が見込めます。
9.定期的な避難訓練実施
あなたの工場では、定期的に避難訓練を実施していますか?
消火器の場所や使用法、非常口の場所、通報手順などのルールを定めて、トレーニングするのが大切です。
万が一、従業員が危険な状況になった場合でも、定期的に避難訓練を実施していれば、正しい対処で迅速に行動できます。
忙しい業務中に避難訓練を実施するのは、時間の無駄のように感じる場合もあるでしょう。
しかし、従業員の命を守るための対策は必須です。
安全対策によって、従業員のモチベーション向上も期待できます。
10.PPEの適切な利用
適切な個人保護具(PPE)の着用を奨励しましょう。
例えば、耐熱手袋や安全靴は危険な作業から身を守るために必須です。
近年は、安全性だけでなく、快適性やファッション性に優れたPPEが注目されています。
従業員がPPEを正しく利用できているか定期的に点検し、必要なら指導を行います。
安全対策は工場の運営において重要な要素であり、従業員のモチベーションアップや作業の効率化に寄与します。
効率化を成功させるポイントとは?
工場効率化のための小さなアイディアを10個お伝えしました。
効率化を成功させるためにさまざまな改善策を実行しても「効果がない」「また失敗だった」とお悩みではありませんか?
実は、効率化を成功させるには押さえるべきポイントがあります。
基本的には「現場ファースト」の考え方が必要です。
効率化を成功させるポイントを7つ紹介します。
現場の声を取り入れる
工場の作業を効率化するためには、現場の声を取り入れることが大切です。
現場スタッフはその場で直面する課題や問題について、熟知しています。
現場スタッフの経験やアイディアから実用的かつ効果的な改善策が見つかるでしょう。
現場スタッフ、管理層、他部門の間で垣根を越えてコミュニケ―ションがとれるような制度を採用してください。
定期的なミーティングやコミュニケーションツールの活用がおすすめです。
効率化へ向けた改善の機運を高め、小さな変更やアイディアを積極的に提案できる環境作りから取り組みましょう。
これにより、細かな問題も早期発見・解決できるようになります。
現場の声を取り入れることで、従業員のモチベーション向上や生産性向上につながります。
工場の作業効率化を成功させるためには、現場との密接な連携が必要です。
目的や課題を明確に
工場の作業効率化に取り組む際、目的や課題を明確にするのは大変重要です。
目指すべき方向が明らかになり、従業員は効果的な改善策を提案しやすくなります。
ある食品加工工場の例を紹介します。
食品加工工場では、目的を「製品の品質向上」と設定しました。
目的に対して課題を「特定の工程での不良品発生率が高い」と明確にしました。
具体的な目的と課題が設定されたことで、製品の品質向上に向けて従業員が共通の目標を理解し、課題に集中的に取り組めたのです。
目的や課題を明確にすれば、従業員は方針を理解しやすくなります。
なぜなら、各々が改善するべきポイントが明確になるからです。
目的や課題を明確にすることは、工場の作業を効率化させる鍵になります。
スモールステップで改善を進める
工場の作業を効率化させる際、スモールステップで改善を進めるアプローチは重要です。
小さな改善から始めて段階的に進めれば、従業員が変化を受け入れやすくなります。
大規模な改善は結果が表れるまでに時間を要しますが、小さな改善はすぐに取り組めて結果が出やすいのがメリットです。
スモールステップは、一つずつ目標をクリアしている実感がもてるので、従業員のモチベーションアップにつながります。
徹底したデータ分析で適切な対策選択
工場の作業を効率化させるためには、徹底したデータ分析が不可欠です。
データ分析によって具体的な問題点やボトルネックが明らかになり、適切な対策を選択できます。
例えば、ある自動車組立工場では、特定の作業工程で不良品の発生率が上昇して、問題になっていました。
徹底したデータ分析の結果、その工程における従業員のトレーニング不足が原因と判明したのです。
対策として従業員に対するトレーニングを強化し、不良品発生率を大幅に低下させました。
データ分析による客観的な情報をもとに、具体的かつ効果的な対策を選択できれば、工場の作業効率を向上できます。
整理整頓と標準化手順による現場改善
整理整頓と標準化は、作業の効率化を支える基本です。
整理整頓によって作業環境が改善され、標準化によって生産がスムーズになります。
作業スペースには必要な工具や部品が整然と配置され、標準化作業に基づいて無駄のないスムーズな作業が行われたらどうでしょう?
作業が滞りなく進み、生産効率向上に寄与しますよね。
整理整頓と標準化とは単なる美化作業ではなく、生産性や品質向上に直結する重要な要素です。
効果的に取り入れて、現場の作業環境を改善しましょう。
持続的な改善活動で定着させる
工場の作業の効率化を成功させるためには、持続的な改善活動が不可欠です。
改善活動を一度実施しただけで、課題を解決できるということはまずありません。
活動を継続し結果を検証して、さらに改善を加えるサイクルを確立する必要があります。
持続的な改善活動には、従業員の積極的な参加が不可欠です。
研修やトレーニングを通して従業員の意識を向上させ、課題解決へのモチベーションを維持してください。
例えば、品質向上を目指す改善プロジェクトにさまざまな立場の従業員が参加して、成果をお互いに評価できるような仕組みが有効です。
工場の作業効率化は一過性のものではなく、絶え間ない進化が必要なのです。
従業員の参加とモチベーション向上を意識し、改善活動を持続する仕組み作りが成功への近道です。
改善による負荷が大きくならないよう注意
作業効率化に向けた改善を実施する際は、従業員やシステムにかかる負荷が大きくならないよう注意してください。
大規模な改革や新しいプロセスの導入がストレスになると、生産性が低下してしまう可能性もあります。
改善は段階的に進め、従業員の反応やシステムへの影響を見定めてください。
杓子定規な改善ではなく、柔軟性のある改革が必要です。
改善による負荷を最小限に抑えることで、従業員の抵抗感も低くなります。
柔軟で段階的なアプローチや、トレーニングとフィードバックのサイクル、透明性とコミュニケーションの強化が、作業の効率化をもたらします。
効率化事例から学ぶ具体的な取り組み方法
ここからは、実際に効率化に成功した事例をいくつか紹介します。
成功事例を自社に当てはめてみると、見えてくる課題や取り組み方法があるでしょう。
ぜひ参考にしてください。
人手不足解消のための自動化機械導入
今や、どの業種においても、人手不足は深刻です。
人手不足解消のためには、機械に任せられる仕事は任せてしまうのがおすすめです。
自動化機械を導入して人手不足に対処した事例を紹介します。
♦自動倉庫システムの導入
配送センターにおける商品のピッキングと梱包にロボットを導入した事例です。
自動倉庫ロボットを導入し、商品のピッキングや梱包を自動化。
これにより従業員は、より高度な作業に集中できるようになりました。
作業が迅速かつ正確になり、人手不足解消に役立っています。
これらは、自動化機械の導入によって人手不足に対処するとともに、効率化向上を実現させた成功例です。
ただし、自動化の導入にはまとまった資金が必要であるため、慎重な計画が必要です。
ライン効率化を実現する設備配置改善
高価な機械やロボットを導入する前に、効率化できる部分はないか考えてみましょう。
自社の生産ラインは効率的な配置になっていますか?
♦生産ライン効率化と機器の導入
食品加工工場におけるライン効率化を事例としてお伝えします。
食品加工工場では生産ライン上での非効率が課題でした。
生産ラインの停滞や待ち時間が長く、これによって製品の出荷スケジュールにまで悪影響を及ぼしていたのです。
問題の発生源を明確にし、下記の対応を行ないました。
- 待ち時間が長かった工程に、新しく包装機と製品移送システムを導入
- 従業員がスムーズに移動できるように、作業スペースの配置を見直し
- 作業ステーション間の距離を最小限にし迅速なアクセスを可能に
これらの取り組みによって、従業員の待ち時間や作業の中断が減少しました。
作業効率が向上するとともに、出荷スケジュールを正確に守れるようになったそうです。
生産ライン効率化は、設備配置の見直しから着手しましょう。
以下の記事では、工場のレイアウト改善について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
無駄を排除して効果的な業務プロセス作り
作業効率を向上させるには、時間や人員資材の無駄を排除する必要があります。
♦無駄の排除とカンバンシステムの導入
自動車部品製造工場の事例をお伝えします。
自動車部品工場では、生産効率低下とコスト増大が課題でした。
そこで、生産プロセス全体を詳細にマッピングし、どの部分に無駄な作業や遅延が発生しているのかを特定しました。
生産性のない作業や不要な検査工程を段階的に削減しました。
さらに、カンバンシステムを導入して、必要な部品や資材が必要なときに必要なだけ供給されるように改善しました。
これにより、過剰な資材や部品の蓄積を解消しスペースの有効活用が可能になったのです。
生産プロセスの分析とカンバンシステムの導入によって、自動車部品工場では無駄が大幅に削減されました。
生産ラインの合理化と無駄の排除によって、品質向上、コスト削減を達成しました。
これによって工場の競争力強化も期待できます。
工場効率化は小さな一歩から
今回は工場効率化への小さなアイディアを紹介しました。
効率化はどの工場においても大きな目標であり、解決しなければならない課題です。
とはいえ、難しい課題であることも事実です。
まずは小さな一歩から。
現場の声を聞き「不便」「危険」「無駄」を、少しずつ改善するところから取り組みましょう。
目の前の小さな問題を見過ごさず、解決していけばやがて工場は効率化できます。
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