ものづくりの最前線である、工場で人手不足が深刻化しています。
なかでも、日本経済を支える中小製造業の人手不足は大きな課題です。
「なぜ若い従業員が辞めてしまうのか理由がわからない」
「具体的にどのような対策をすればいいのか知りたい」
このように悩みの経営者の方が多いのではないでしょうか。
人手不足によって「工場の稼働停止」「廃業」に陥る前にできることがあります。
今回は、人手不足の工場ほど離職率が高い理由をお伝えします。
さらに、退職者を減らすためにできる施策を解説しました。
ぜひ最後までお読みください。
工場で人手不足が深刻化する理由
工場で人手不足が深刻化しています。
経済産業省が公開している下記の表をご覧ください。
※出典:2023年版ものづくり白書(令和4年度 ものづくり基盤技術の振興施策)概要
26ページ「ものづくり人材の雇用と就業動向①」図1~3
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2023/pdf/gaiyo.pdf
2022年、製造業の就業者数は1,044万人と長らく横ばい状態が続いています。
しかし、34歳以下の若年就業者が減少の一途をたどっています。
特に中小企業の製造業では「従業員数過不足DI」の値がマイナス19.0を示し、人手不足が深刻化していることが見てとれます。
なぜ工場で人手不足が深刻化してしまうのか、2つ考えられる理由があります。
- 少子高齢化と労働力人口の減少
- 過労や労働時間が問題視される現状
それぞれ詳しく解説します。
少子高齢化と労働力人口の減少
工場で人手不足が深刻化する理由の一つに、少子高齢化と労働人口の減少があります。
総務省の統計をご覧ください。
出典:生産年齢人口の減少 総務省 高齢化の推移と将来推計 図表2-1-1-1
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nd121110.html
データによれば、高齢者の比率が増加している反面、若年層の数は減少しています。
具体的には、2050年には労働人口が約5,275万人になる見込みです。
この人数は、2021年の労働人口と比較すると29.2%もの減少になります。
労働人口の減少により、工場では必要な労働力が確保できず人手不足が深刻化しています。
過労や労働時間が問題視される現状
かつての工場勤務は労働時間が長く、働き過ぎが問題視されていました。
一般社団法人日本経済団体連合会の2020年の調査による、年間平均労働時間の表がこちらです。
出典:2020年労働時間実態調査 【一般労働者】業種別 総実労働時間 年間平均
一般社団法人日本経済団体連合会 3ページ
https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/081.pdf
製造業の総実労働時間年平均は、1,987時間です。
2017年では2,020時間、2018年では2,014時間となっています。
製造業の労働時間は、年々減少する傾向にあります。
製造業以外の業種でも労働時間の減少が見られます。
要因の一つに「働き方改革関連法」の施行があると考えられます。
労働者の健康や生活バランスが損なわれる原因となる、長時間労働が解消されつつあるのは事実です。
「働き方改革関連法」の施行は、かつて過酷な長時間労働や過労が問題視されてきた結果と言えます。
職種や現場の特徴が起因
工場の労働は単純作業や重労働が多く、作業には特定の技術やスキルが求められます。
さらに現場作業は「きつい」「汚れる」「夜勤がある」といったマイナスイメージがあります。
上記の理由から、工場勤務に魅力を感じない若者が増えているのではないでしょうか。
昨今は、職場環境の良さやワークライフバランスをより重視する若者が増えています。
もちろん、すべての若者が工場勤務を嫌うわけでありませんが、敬遠されているのは事実と言えるでしょう。
なぜ人手不足の工場で働く人々は辞めたがる?
人手不足の工場において、離職者を減らすことはきわめて重要です。
さまざまな対策を講じているにもかかわらず、なぜ退職希望者が後を絶たないのでしょうか。
そこには、経営者の方が見落としている理由が潜んでいるかもしれません。
なぜ貴重な人材が辞めたがるのか、考えられる原因は以下の3つです。
- 上司や社員間のストレスが原因
- 過酷な業務と労働時間が問題
- 転職・将来に不安がある
詳しく解説します。
上司や社員間のストレスが原因
人手不足の工場を辞めてしまう人が多いのは、上司や同僚との人間関係のストレスが一因です。
例えば、上司の指示がわかりにくかったり、同僚とコミュニケーションがうまく取れなかったりする場合、人間関係が徐々に悪化してしまうことがあります。
人手不足の工場は少人数で運営している場合がほとんどですから、毎日同じ人と一緒に働かなければなりません。
たとえ合わない人がいても、毎日長時間顔を合わせるのですから何とか良好な人間関係を構築していく必要があります。
また、人手不足の工場では他部署への移動を希望しても、承認される確率は低いでしょう。
このような原因が重なって、働く環境がストレスになり結果的に仕事を辞めてしまう人が増える原因になっています。
過酷な業務と労働時間が問題
人手不足の工場で人が辞めてしまうのは、過酷な業務と労働時間が原因ではないでしょうか。
例えば重いものを運んだり、機械を操作したりする過酷な業務は体力や集中力、精神力を酷使しますよね。
人手不足の工場では常に労働力が不足していますから、従業員一人にかかる業務の負担も大きくなります。
生産性の低い現場では労働時間が長かったり、労働環境が悪かったりして、人が辞めてしまう傾向にあります。
人手不足がさらに生産性低下を招くという、負のスパイラルです。
さらに、人手不足の工場では、労働力不足を補うために時間外労働や休日出勤が増加することが多々あります。
休日出勤や過酷なシフト勤務が続けば、労働者本人のみならず家族にとっても多大なストレスです。
家族と過ごす時間や、趣味に没頭する時間などプライベートの時間が確保できないと、退職につながる原因になります。
転職・将来に不安がある
人手不足の工場で働く人々が辞めたがるのは、さまざまな理由があります。
将来への不安を抱えているのも理由の一つです。
健康保険、退職金、有給休暇などの福利厚生が充実していない職場では、労働者は将来の不安を感じやすくなります。
その他、従業員が不安を感じる要素としては「給料が上がらない」「ボーナスが出ない」「工場の後継ぎがいない」などがあります。
また、今の仕事で得たスキルは「他でも通用するだろうか」という不安があるのではないでしょうか。
より汎用性の高いスキルを身に付けたり、自分のキャリアを向上させたりするために別の仕事を選ぶ場合があります。
人手不足がさまざまな業種で問題となっている昨今、労働者はより条件の良い仕事を求めるのは当然の流れです。
人手不足の工場にとっては、より人が集まりにくい状況になっていると言えます。
辞める人を減らすための施策
人手不足の工場では、離職者を減らすための対策を講じる必要があります。
何らかの施策をしなければ、人手不足が原因で工場の稼働が続けられなくなる怖れもあります。
辞める人を減らすための具体的な施策を3つお伝えします。
- 労働環境の改善
- 働きやすさの向上
- 社員のスキルアップ
上記の3つは、経営者が率先して行えば効果が出やすい施策です。
一つずつ見ていきましょう。
労働環境の改善
労働環境の改善は、従業員の働きやすさや満足度を向上するので辞める人を減らすための重要な施策です。
長時間労働は従業員の健康やモチベーションに悪影響を与えます。
適正な勤務時間を設定するところから取り組んでください。
例えば、業務の効率化を通じて余分な残業を減らす、週の労働時間が長くなり過ぎないように法定労働時間を尊重するなどの方法があります。
さらに、従業員が自分の都合に合わせて働ける柔軟なワークスケジュールを提供するのも一案です。
また、従業員が最新の業界動向を学んだり、技術を身に付けたりできるようにトレーニングを提供するのは労働環境改善の一環です。
研修やトレーニングプログラムを提供し、従業員の知識や視野を広げましょう。
働きやすさの向上
辞める人を減らす施策として、働きやすさの向上は重要です。
具体的には、福利厚生の充実や職場環境を良くする取り組みは欠かせません。
福利厚生の向上として、下記の5つの改善策があります
- 従業員および家族への包括的な健康保険の提供
- 健康診断や健康増進プログラムの実施
- 育児休暇や介護休暇の提供
- 提携商品のサービスや割引特典の提供
- 休憩スペースやフィットネス施設の提供
従業員とその家族へ健康的な暮らしを提供するのが福利厚生の基本的な考え方です。
自社でできることを考えてみましょう。
職場環境の改善策としては、社内のコミュニケーションを活発にする取り組みが有効です。
ボランティア活動や社会貢献プログラムを実施するのもいいでしょう。
従業員が価値観を共有できれば、部門の壁を越えて活発な交流が生まれます。
これらの取り組みは従業員の働きやすさと満足度を向上し、離職者を減らす結果につながります。
社員のスキルアップ
社員のスキルアップを促す施策は、離職率の低減につながる可能性が高いのでおすすめです。
具体的には、教育支援やキャリア支援の導入を検討してみてください。
スキルアップのチャンスが提供されれば、従業員は自己成長の場や自分を活かす方法を見出しやすくなります。
自社に「キャリアを広げるチャンスがある」と考えれば、転職したいという意向はなくなるでしょう。
教育支援やキャリア支援は新入社員や若手社員を対象に提供するものと考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、中堅社員やベテラン社員にもスキルや状況に応じた教育支援が必要です。
それぞれの層に適した教育を継続すれば、組織的なスキルアップが可能になります。
従業員は教育支援などのサポートが整っている企業に働きやすさを感じ、仕事への満足度が向上します。
社員がスキルアップできる環境を提供できれば、組織への忠誠心や満足度を向上させる結果につながります。
さらに、スキルや知識が豊富な従業員が増えることで、組織の生産性や競争力の向上にも寄与します。
以下の記事では、工場での新人教育について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
人手不足の工場での働き方改善ポイント
ここからは、人手不足の工場で働いている人に向けて働き方改善のヒントを2つお伝えします。
人手不足の工場で働いていると、疲労やストレスが蓄積していきます。
辞める決断をする人も多いでしょう。
しかし、辞める前に働き方を改善できないか考えてみてください。
自分に合ったリラックス方法を見つける
人手不足の工場で働いている方は、自分なりのリラックス方法を見つけて仕事と生活のバランスを取ることが大切です。
リラックス方法といっても、実にさまざまなものがあります。
簡単にできる方法から試して、自分に合ったものを見つけてください。
例えば、読書、音楽鑑賞、散歩、瞑想などがおすすめです。
休日は仕事のことを忘れて趣味に没頭する時間を設け、心身のリフレッシュを図りましょう。
仕事の合間に取り入れられるリラックス方法もあります。
例えば深呼吸やストレッチです。
1〜2分あればできるので、ぜひ試してみてください。
自分ではリラックス方法が見つけられない方は、プロに相談するのもいいでしょう。
心理カウンセリングやストレス管理のプロに相談すれば、有効なアドバイスや実践的なテクニックを提供してくれます。
お伝えしたものを組み合わせたて自分に合ったリラックス方法を見つけ、働き方を改善していくことが大切です。
必要なのは、自分の健康やキャリアを優先する考え方です。
人手不足の工場で忙しく働いていても、ワークライフバランスの充実を心がけてください。
独学や資格取得でスキルアップを目指す
「スキルアップを目指す」考え方は、人手不足の工場で働き方を改善する重要な戦略です。
スキルを向上させつつ、自己価値を高められます。
職場でのキャリアを向上させ、働き方の改善につながります。
独学や資格取得でスキルアップを目指すなら、まずはキャリア目標を設定してください。
どの分野でスキルアップを目指すのか、どの職種やポジションを目指すのか考え、目標達成に向けて学習計画を立てます。
独学でも書籍や、動画学習を取り入れると効率的に知識を習得できます。
自分の強みと弱みを理解し、改善点を見つけることが重要です。
特定の分野での専門知識や技術を証明するために、資格取得を目指すのもおすすめです。
資格はあなたのスキルを客観的に証明するので、自己価値をより高められます。
独学は、自己管理能力を高める良い機会です。
学習計画を立てて、実行することで時間管理や目標達成能力が向上します。
加えて独学によって新しいスキルや知識を身に付ければ、仕事を効率的にこなせるようになり、業務のストレスが減るでしょう。
特定の資格やスキルはあなたの価値を高めます。
つまり、昇進や新しい職種へ転職する際も有利にはたらき、働き方改善につながります。
工場の人手不足の原因や対策については、以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
人手不足の工場を辞める理由を知って対策を講じよう
今回は、人手不足の工場で離職率が高い理由をお伝えしました。
貴重な人材が辞めてしまう理由は、3つです。
- 上司や社員間のストレスが原因
- 過酷な業務と労働時間が問題
- 転職・将来に不安がある
この問題に対処するには、さまざまな施策を積極的に採り入れるべきです。
具体的には「労働環境の改善」や「働きやすさの向上」または「社員のスキルアップの機会提供」などがあります。
経営者の方は、本記事を参考に改善策を検討してください。
また、個々の従業員にも働き方を改善するためにできることがあります。
自分に合ったリラックス方法を見つけたり、独学や資格取得を通じてスキルアップを目指したりといった方法を試してみてください。
工場の働き方改善が、人手不足解消へつながります。
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