工場における慢性的な人手不足の問題は、年々深刻化を増しています。
工場が人手不足となった原因には、日本全体の人口の減少や高齢化など、いくつかの問題が背景にあると考えられます。
このまま人手不足の状態が続けば、製品の生産や品質、サービスの低下につながることになりかねません。
また、製造業全体の衰退など、その他さまざまなところに影響をもたらすおそれがあるでしょう。
この記事では工場が慢性的な人手不足におちいった原因と、これから取り組むべき対策について考えていきます。
今後は、いかに人材を活用していくかを考えることが、人手不足を解消するうえでは大きなカギになるといえます。
これからの工場が取り組むべきポイントや、人材活用術などについてもふれていきますので、最後までぜひお読みください。
人手不足の深刻な現状とその原因
我が国の製造業において人手不足の問題は、事業に影響を及ぼす社会情勢として考えられるほど深刻化しています。
下記は「2023年版 ものづくり白書」から、事業に影響を及ぼす社会情勢の変化に対しての企業認識を表した資料です。
出典:(令和4年度 ものづくり基盤技術の振興政策)概要「2023年版 ものづくり白書」
経済産業省 厚生労働省 文部科学省(令和5年6月)
資料より、2021年度、2022年ともに、50%程度の高い割合で、人手不足が事業に影響を及ぼす社会情勢としてとらえられて問題になっています。
事業に高い割合で影響を及ぼすと問題になるほどの人手不足は、いったいどのような原因でおきているのかを詳しくみていきましょう。
人口減少と高齢化による労働力の減少
下記の表は、2023年12月20日に総務省統計局より発表された「人口推計ー2023年(令和5年)12月報ー」です。
出典:人口推計
総務省統計局 令和5年12月20日
表から、2023年12月1日現在での総人口は、前年同月に比べて約62万人減少しているのが読みとれるでしょう。
しかも、総人口の減少は2011年から連続して続いている状態です。
一方、高齢者の人口の割合はどうでしょうか。
2023年7月1日現在、65歳以上の人口は前年比で3万1千人減っているものの、75歳以上の人口は75万5千人増加しています。
もう少し詳しく年齢別の人口推移をみてみましょう。
出典:人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)
-全国:年齢(各歳)、男女別人口・都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口-
総務省統計局 2023年4月12日公表
上記の表は年齢区別で人口の割合推移を表したものです。
2000年頃からの約20年間、15歳未満と15歳から64歳までの人口はほぼ右肩下がりで減っています。
その一方で65歳以上、75歳以上の人口はほぼ右肩上がりで増えています。
これらのことは、日本では15歳から65歳未満の働ける世代、いわゆる「生産年齢人口」が減少しているともいえるでしょう。
工場業務への魅力低下とスキル不足
働き方が多様化している現在において、工場業務は夜勤などの交代勤務があり、シフトがきついと敬遠される方もいるでしょう。
そのうえ工場の仕事に対して「きつい」「きたない」「危険」といった、いわゆる「3K」のマイナスイメージが先行しているのも事実です。
また、仕事に就いたとしても単純作業でスキルアップが望めないなどの理由で、数年で辞めていく事例が多くあります。
とはいえ、工場の仕事には、ものづくりにたずさわることができるなどの面白い側面があります。
工場の仕事の魅力をアピールして働きたいという人を増やすと同時に、いまいる従業員を定着させるような工夫をしてみましょう。
工場に従業員を定着させるには、人を育てるスキルが必要です。
「見て覚えろ」というのではなく、コミュニケーションをとりながら従業員を育てることができる人材が増えれば、定着率アップにつながるでしょう。
工場の魅力をアピールし、従業員の定着率を上げていくことができなければ、今後も人手不足の問題は深刻化していくおそれがあるでしょう。
技術革新による人手不足の拡大
急速な技術革新により、世の中はどんどん大きく変化しています。
デジタル技術の進歩に伴ってIT企業が増えると同時に、IT業界で働きたい人材は増加しています。
働ける世代の人口減少とともに、他業界で働きたいと思う人が増えたことが、製造業での人手不足を後押ししているのです。
変化が大きい現代においては新しいことを取り入れて柔軟に対応していかなければ、時代の変化に取り残されてしまいます。
工場勤務の従業員にとって仕事を辞めたい理由のひとつに、スキルアップが望めない環境が苦痛という声があります。
長年同じことの繰り返しでスキルアップが望めない状態で働き続けるのは、将来に不安を感じてしまうのも無理はありません。
そのうえ現代では技術革新によって、在宅などでのテレワークが可能な企業が増えています。
時間や場所にしばられない柔軟な働き方が可能となった現代においては、時間や場所にしばられやすい工場勤務は、特に敬遠されやすい仕事のひとつといえます。
時代の流れに沿って新しいことにチャレンジしてみる、従業員がスキルアップできる環境を整えるなどを検討してみましょう。
従業員がより働きやすい環境を作ることが、今後の人手不足拡大を食い止めるうえで重要といえるでしょう。
人手不足がもたらす工場・製造業の影響
工場や製造業にとって人手不足の問題は、本来ならできる業務ができなくなるなど、さまざまな影響があるでしょう。
例えば、生産効率の低下や外注によるコスト増加、人手不足による納期遅れなどは、比較的身近な問題といえます。
また、工場・製造業において、人材の採用競争や離職率上昇はこれからの事業継続を考えるうえで頭を悩ます課題であるでしょう。
ここからは人手不足がもたらす工場・製造業への影響について、詳しく見ていきたいと思います。
生産効率の低下とコスト増加
人手不足の状態が続いて生産に必要な人材が確保できなければ、おのずと商品の受注を縮小せざるを得ない場合が出てくるでしょう。
生産を減らさずとも受注を続けた場合、外部の人材を雇う必要があるかもしれません。
そうした場合、利益の減少や外注費がかさむなどの問題が発生するおそれがあります。
たとえ大きな受注がまとめてあったとしても、人が足りなくては生産することができません。
また、外注費がたくさんかかるようでは、大きな利益につながることはないでしょう。
人材不足は、生産効率の低下やコスト増加など、さまざまな問題につながるといえます。
品質管理や納期遅れの懸念
人手が少ない状態での製品生産が続けば、スケジュール管理がきつくなったり、いまいる従業員の作業量や負担が増したりするでしょう。
少ない人数では生産が間に合わず、納期遅れや品質管理不足などといった問題を起こす可能性が懸念されます。
品質管理がおろそかになったり、納期に遅れたりするようなことになれば、顧客からの信頼が低下し、場合によっては今後の取引に影響することがあるでしょう。
そうした場合、競合他社に仕事を奪われることにもつながります。
人材の採用競争と離職率上昇
製造業における人手不足は、業界全体としての問題ともいえます。
新しい人材を確保しにくく、離職率が高いのはいまやどこの工場でも同じです。
少しでもいい人材を得るには、採用の幅をひろげたり、ライバル企業より働きやすい環境を整えたりしていくことが重要となります。
そのうえで、いまいる従業員の離職率の上昇を防ぐには、労働環境や福利厚生を整えていく必要があるといえます。
休みを取りやすい状態や、産後や子育て中でも働きやすい職場づくりは、従業員の離職率低下につながるでしょう。
また、女性や高齢者などが無理なく働ける環境づくりができれば、雇用の幅がひろがり、人手の確保がより容易となるでしょう。
【人手不足対策】工場で取り組むべきポイント
いま以上に人手不足の状態におちいるのはなんとしても食い止めたいところでしょう。
ここからは対策や工場で取りくむべきポイントを提示していきます。
ぜひお読みいただき、参考にしていただければと思います。
イメージアップ戦略
工場の仕事に対して「きつい」「きたない」「危険」のいわゆる「3K」といったネガティブなイメージを持っている方が少なくないのが現状です。
かつては本当に「3k」の職場である工場が多かったかもしれません。
しかし現代では、かなりの工場で自動化や機械化が進み「3K」といわれるような仕事を人間が行わなくてもよくなりました。
ひと昔前よりだいぶ働きやすい工場がいまは増えており、かつてのネガティブなイメージから脱却する必要があります。
それには工場や仕事内容などを紹介するホームページを作成したり、SNSなどを利用したりして、情報発信をおこなうといいでしょう。
工場をより身近な存在としてアピールできれば、興味を持つ人が増えるかもしれません。
就業希望者が気軽に問い合わせできる場所を用意し、仕事の魅力を伝える機会を増やしていきましょう。
工場仕事の実態がわかれば、就業希望者が増える可能性がでてきやすいでしょう。
教育・育成プログラムの充実
工場の離職率が上昇しているのには、今後の仕事に対しての不安を抱えている人が多い背景があると考えられます。
毎日同じ作業の繰り返しばかりでスキルアップが望めない、AIや機械などの導入で仕事の範囲が減ってしまったなどは、自分のキャリアや将来に不安を感じる要因となるでしょう。
自社製品や仕事の技術などに対する教育を充実し、徐々にスキルアップや昇給が望める環境を作っていきましょう。
従業員のモチベーションを高めることは、離職率低下につながります。
また、いままではベテラン従業員から若手へと技術を継承するのは、見て覚えることが一般的ではありました。
でもそれでは一人前になるのに時間がかかってしまいます。
現代では動画などで映像化し、技術習得までの過程をマニュアル化することができます。
短期間での技術継承ができるようになれば、即戦力となる人材を増やすことが可能です。
今後、即戦力となる人材が増えていけば、事業の幅をひろげたり、一人の従業員が複数の仕事に対応できるようになったりと仕事の幅がひろがっていくでしょう。
工場の新人教育については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
人件費を変動費と考える体制作り
企業の経費のうち、正社員の人件費は固定費となります。
一方、派遣社員や期間従業員、パートやアルバイトなどはフロー型人材といわれ、人件費を変動費としてみることが可能です。
フロー型人材は仕事の繁忙期、閑散期に合わせて雇うことが可能です。
仕事が少ない閑散期の雇用を減らせば、余剰な人材を抱えて費用が増すといったリスクを減らすことが可能です。
生産量に合わせた雇用調整が可能で、人件費を変動費とし、固定費を抑えることができます。
人権費における固定費の割合を抑えておくことで、万が一、業績が悪化した場合に、既存社員の給料削減やリストラなどを防ぐことができます。
また、工場勤務を希望する派遣社員や期間従業員は経験者が多く、スキルを持った方たちを集めやすいメリットがあります。
経験者であれば短期間の研修で即戦力となってもらいやすく、幅広い現場で活躍してもらうことが可能です。
そのうえ、人材募集にかかる費用が軽減できるなどのメリットがあります。
人件費を変動費と考えるような柔軟な体制作りが、今後は必要となるでしょう。
自動化・AI・IT技術の活用
工場において生産ラインを自動化していくのは、これからますます必要です。
生産ラインを自動化するには最初の設備投資が必要ですが、設備を導入することで、今後の作業の効率化や生産性向上を望めます。
また、人件費を抑えることができるなど、結果として多くのメリットがあります。
そのうえいまはAIやITの技術が著しく向上しています。
いちどシステム化の仕組みができれば、人材育成に費やしていた時間や経費の削減が可能となっていくでしょう。
いままで人に頼っていた作業の工程を減らすことができたり、危険な仕事を機械にまかせたりすることができれば、労働環境の改善につながります。
少ない人材で効率的に仕事をまわしていくうえで、生産ラインの自動化や、AI・IT技術の活用はぜひとも考えていきたいところです。
以下の記事では、工場のDX化のメリットや導入事例について詳しく解説していますので、こちらも合わせて参考にしてください。
外国人労働者の活用と支援体制
高齢化社会で働き手が少ない日本にとって、外国人労働者の存在は、今後は大きな助けとなるでしょう。
「外国人技術実習制度」は、開発途上国の外国人を最長で5年間受け入れ、働きながら技術を学んでもらう制度です。
工場にとっては貴重な働き手として外国人の方を雇用することができます。
また一方で外国人の方にとっては、母国では習得が難しい技能を日本で学べ、持ち帰ることができるというメリットがあります。
受け入れるうえでの支援体制の整備は必要ではありますが、日本人の働き手が少ない状況を解決していくには、制度の活用を考えていくといいでしょう。
工場の人手不足対策の重要性と取り組み方向
工場の経営存続や生産を保つためには、人手不足の問題を解決することが重要な手がかりだといえます。
日本全体の人口が減少し、高齢化社会などによる生産年齢人口の減少など、どうにもならない側面がありますが、工夫次第でまだまだ人手不足を解消することは可能です。
生産ラインの自動化やAI・IT技術の活用、外国人労働者の受け入れなどは、工場の人手不足対策にはこらからますます必須となっていくでしょう。
また、工場の仕事に対するネガティブなイメージの払しょくや、教育・育成プログラムの充実をはかることで、若い世代の就業希望者が増えていくかもしれません。
人手が集まらなければ、経営存続や生産維持が難しいなど、深刻な問題はありますが、時代にあった方法で、人手不足解消へと取り組んでいきましょう。
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