訪問介護での人手不足の解消方法は?ヘルパー不足の原因も解説

少子高齢化が加速し、介護業界の需要は高まる一方です。

しかし、介護の現場ではヘルパーの人手不足が深刻になり、多くの事業者がヘルパーの確保に対する問題を抱えています。

本記事では、訪問介護でヘルパーの人手不足が深刻化している原因と人手不足の解消方法を解説します。

ヘルパーの人手不足で悩んでいる事業者様は、参考にしてみてください。

訪問介護での人手不足の解消方法は?ヘルパー不足の原因も解説
目次

訪問介護の人手不足の現状

まずは訪問介護の人手不足の現状を紹介します。

今回は、以下の点に着目しました。

  • 訪問介護の有効求人倍率が過去最高
  • 訪問介護の2024年の制度改正
  • 地方の訪問介護の問題
  • 訪問介護の不安定な雇用
  • ヘルパーの高齢化

それぞれについて、詳しく解説していきます。

訪問介護の有効求人倍率が過去最高

厚生労働省が開催した2023年度の社会保障審議会で、訪問介護の有効求人倍率は2022年時点で15.53倍になりました。

この有効求人倍率は2019年の15.03倍を抜いて過去最高になりました。

介護職員の人手不足感のデータでも、訪問介護は80.6%と2位の介護職員の64.4%を大きく引き離しています。

厚生労働省の発表した訪問介護の有効求人倍率は、訪問介護サービスの利用者数が急増している一方で、十分な数のヘルパーが確保できていない現状を反映しています。

(引用:厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会(第220回)P36

地方の訪問介護の問題

地方では、訪問介護の人手不足問題がさらに深刻な状況にあります。

都市部への人口流出や若者の減少により、地方のヘルパー不足は特に顕著です。

また、訪問介護では、移動時間や待機時間の報酬が適切に反映されないケースが多いことも問題です。

車での移動が多くなる地方では、移動時間が多くてもその分の報酬をもらえないと十分な給与になりません。

ヘルパー不足が原因で、地方の利用者が必要なサービスを受けられない事例が増加しており、地域間のサービス格差が深刻化しています。

対策として、地域住民の参加を促す取り組みや、地方自治体による支援策の強化が求められています。

訪問介護の不安定な雇用

訪問介護業界では、非正規雇用が一般的であり、これが人手不足の根本的な原因の一つとなっています。

不安定な雇用状況は、ヘルパーの仕事へのモチベーション低下やキャリア形成の妨げとなり、離職を加速させています。

ヘルパーの安定した雇用は人材不足の解消に直結するため、業界全体での雇用形態の改善が急務です。

ヘルパーの高齢化

訪問介護を担当するヘルパーの高齢化も、人手不足を加速させる大きな要因の一つです。

経験豊かな高齢ヘルパーが退職すると、若い人材がその空席を埋めるのが難しく、結果として知識や技術の継承が不十分になります。

更に、高齢のヘルパー自身が健康問題を抱えて仕事を続けることが困難になる場合もあり、これが人材不足の問題をさらに深刻化させています。

高齢ヘルパーの健康管理と若い世代へ引継ぎできる環境の構築が、介護業界の持続可能性にとって重要です。

訪問介護の2024年の制度改正

訪問介護の制度は、高齢者の増加と介護職員不足を背景に、近年何度かの改正を経てきました。

2024年の制度改正では、通所介護事業所が訪問介護サービスを提供できるようになります。

その結果、事業所はデイサービスと訪問介護サービスを両立できるようになり、デイサービスの介護職員が訪問介護を担当できるようになります。

訪問介護は介護職員初任者研修を修了していれば携われるので、訪問介護の人手不足解消に効果が見込めるでしょう。

訪問介護の利用者にとっても、 短時間訪問介護の利用時間の上限が1日2回から3回に拡大され、よりきめ細やかなサービス利用が可能になります。

訪問介護だけでなく、介護業界では人手不足が深刻化しています。

介護業界の人手不足の現状や対策については以下の記事で詳しく解説していますので、こちらも合わせて参考にしてください。

訪問介護がヘルパーの人手不足になった原因

介護業界は全体的に人手不足という問題を抱えています。

その中で、訪問介護の人手不足が顕著になっている理由をいくつか紹介します。

  • 介護保険の範囲が曖昧
  • ヘルパーが1人で介護する責任の大きさ
  • ヘルパーへの給与未払いをする事業者

訪問介護の人手不足が悪化する理由について、解説していきます。

介護保険の範囲が曖昧

訪問介護における人手不足の主要な原因の一つは、介護保険の適応範囲の曖昧さにあります。

介護保険制度において、どのサービスが保険の適用範囲に含まれるかが不明確なため、ヘルパーの業務範囲の拡大と複雑化を引き起こしています。

日本ホームヘルパー協会が提示する訪問介護の仕事内容は以下の通りです。

  • 食事の介助
  • 排せつの介助
  • 入浴の介助
  • 家事の介助

しかし、利用者の中には買い物に行って欲しいや食事を作り置きして欲しいなどの要求をされるケースがあります。

どこまでが介護保険の適応範囲か、ヘルパーによって判断が異なる点も負担になっています。

(引用:日本ホームヘルパー協会「訪問介護員の仕事とは」

ヘルパーが1人で介護する責任の大きさ

訪問介護では、ヘルパーが単独で利用者の自宅を訪問し、介護サービスを提供することが一般的です。

現状の訪問介護は、ヘルパー個人に大きな責任を感じさせてしまうのが人手不足の原因になっています。

突発的な体調不良や転倒などの怪我は、ヘルパーにとって不安と負担を生じさせます。

その結果、離職して介護施設へ転職したり介護業界への新規参入を躊躇させたりする点が課題です。

ヘルパーへの給与未払いをする事業者

訪問介護業界では、ヘルパーへの給与未払いも問題です。

一部の事業者は、ヘルパーに業務負担を求める一方で、適切な給与を支払わないケースが発生しています。

この不適切な給与体系は、ヘルパーのモチベーション低下につながり、業界全体の信頼性と人材の確保に悪影響を及ぼしています。

ヘルパーへの適正な給与の支払いと業務量は、ヘルパーの人材不足問題の解消に不可欠です。

訪問介護事業者がヘルパーの人手不足を解決する方法

訪問介護事業者がヘルパーの人手不足を解消するためには、以下のような解決方法があります。

  • 給与と福利厚生の見直し
  • ヘルパーの研修と教育の拡充
  • 訪問介護のヘルパーになる魅力を伝える

それぞれの解決法を実施して、ヘルパーの人材流出の防止と新しい人材の雇用を両立させてみましょう。

給与と福利厚生の見直し

訪問介護業界における人手不足問題を解決するためには、給与体系と福利厚生の全面的な見直しが重要です。

ヘルパーに対する適正な給与の設定は、職業としての魅力を高め、業界に新たな人材を引き寄せる効果があります。

また、充実した福利厚生はヘルパーの仕事への満足度を向上させ、長期的な雇用関係を促進します。

福利厚生の見直しには、健康保険や年金制度、休暇制度の改善など、ヘルパーが安心して働ける環境の構築が必要です。

事業者は、ヘルパーが安定して長期間勤務できるような労働環境の提供が必要です。

ヘルパーの研修と教育の拡充

ヘルパーの研修と教育プログラムの拡充は、人手不足解消のために重要な施策です。

継続的な研修を導入することで、ヘルパーのスキルと専門知識の向上につながり、経験の浅いヘルパーの早期離職を予防できるためです。

研修と教育には、最新の介護技術や心理的支援に関する知識の提供、実践的な介護研修などが含まれます。

ヘルパーが自身の介護スキルを向上させることでサービスの質を高め、業務の効率化を促進します。

また、教育プログラムを通じて職員のモチベーションを向上させることで、訪問介護業界への定着率を高める効果も期待できるでしょう。

訪問介護のヘルパーになる魅力を伝える

訪問介護のヘルパーとして働く魅力を積極的に広報することも、人手不足解消の重要な手段です。

介護職の社会的な重要性や仕事のやりがい、キャリアアップの機会などを強調することで、新たな人材が業界に興味を持ち、参入するきっかけにつながります。

具体的には、以下の方法があります。

  • 現場ヘルパーの経験談を共有する
  • キャリア形成の事例を紹介する
  • 介護業界での成長の可能性を示す

このような情報発信により、訪問介護の職業に対するポジティブなイメージを形成し、新たな人材を雇用できるでしょう。

訪問介護の人手不足とDX化

訪問介護の人手不足を解消するためには、DX化が大切です。

DXはデジタルトランスフォーメーションの略で、ITやAIを駆使して業務を効率化することを意味しています。

訪問介護とDX化について、詳しく解説していきます。

訪問介護とDXの導入

訪問介護分野におけるDXの導入は、人手不足問題を緩和するための有効な手段として注目されています。

デジタル技術を取り入れることで業務の効率化を図り、サービスの質を向上させることが期待できるためです。

訪問介護におけるDX化の具体的な例は、以下の通りです。

  • 介護ソフトによる利用者の記録をデジタル化
  • 遠隔でのコミュニケーションツールの使用

これらの技術を導入することで、ヘルパーの日常業務を軽減し、より多くの利用者に高品質なサービスを提供できます。

DXの導入は利用者の満足度を高めると同時に、サービス提供能力を拡大してくれます。

DXによるヘルパーの負担軽減

DXの導入により、訪問介護のヘルパーの負担を大幅に軽減することが可能です。

例えば、情報共有の効率化により必要な情報を迅速に入手し判断を下すことが可能になります。

また、介護ソフトによる記録の入力や管理は、日々の煩雑な書類作業を削減し、ヘルパーが介護に集中できる時間を増やしてくれます。

更に、ヘルパーの負担軽減によって仕事への満足度が向上し、仕事への定着率を高め、業界全体の人材不足問題の緩和につながります。

DX化による効率的な業務運営は、訪問介護業界の持続可能性を高め、新たなサービスモデルの開発にもつながるでしょう。

介護業界でDX導入が必要な理由については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

訪問介護の人手不足は働きやすい環境の改善から

訪問介護業界は、深刻な人手不足に直面しています。

2022年の有効求人倍率は過去最高の15.53倍になり、今後も増加する可能性があります。

訪問介護に欠かせないヘルパーの人材不足を解消するためには、給与や福利厚生を見直し、ヘルパーが安心して働ける環境を提供することが重要です。

同時に、DX化を導入してヘルパーの負担を軽減することも求められています。

ヘルパーの雇用条件を安定させ、研修や教育によって仕事へのモチベーションとスキルを向上させることが、事業者にとっての課題です。

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