工場の人手不足はなぜ起きる?人材確保のための最新戦略とは

近年、工場における人手不足が深刻化しています。

原因としては、高齢化社会に伴う労働力人口の減少、若者の製造業離れなどがあげられ、早急な対策が求められています。

このまま人手不足の状態が続けば、工場の経営危機にもつながりかねません。

いくら製品の需要があっても、人手不足で供給が追い付かなければ経営は成り立たなくなります。

また、人が入ってもすぐにやめてしまう、従業員が高齢者ばかりで若者がいないなども大きな問題です。

せっかく良い製品、技術があっても、次世代へ継承することができなければ、企業として今後の存続は危ういでしょう。

この記事では、工場の人手不足が起きる原因とその影響、解消するための戦略について考えていきます。

これ以上、人手不足による影響が深刻化しないよう、ぜひ参考にしてください。

工場の人手不足はなぜ起きる?人材確保のための最新戦略とは
目次

工場における人手不足の深刻さとその背景

工場における人手不足の背景には、少子高齢化による社会全体の働き手不足の影響が大きいと考えられています。

またそれに加えて、製造業へのマイナスのイメージなど、さまざまな理由が複雑にからみあっています。

近年、働き方が多様化するにつれて、特に若者の製造業離れが加速化しているのも深刻な問題です。

求人をかけても若手が集まらない、せっかく入ってもすぐにやめてしまうなどの現状であれば、工場における人手不足は今後、ますます加速化してしまいます。

いったいどのような理由で工場の人手不足が深刻化しているのかを詳しくみていきましょう。

人口動態と製造業の人手不足

日本における人口の15~64歳が占める割合は、下記の「日本の人口の推移」の表が示すとおり近年減少化しています。

しかしその反面、65歳以上のいわゆる高齢者といわれる方たちの割合は、年々増加し続けています。

出典:厚生労働白書(令和 4 年度厚生労働行政年次報告)令和5年版

15~64歳の人口の減少は、いわゆる労働力人口の減少ともいえます。

労働力人口の減少により、年々働く人達の人口が日本全体として減ってきているともいえるでしょう。

また、製造業における就業者数は、以下の「就業者数の推移(全産業/製造業)」を示す表から、近年ほぼ横ばいであることが読み取れます。

出典:(令和4年度 ものづくり基盤技術の振興政策)概要「2023年版 ものづくり白書」
経済産業省 厚生労働省 文部科学省(令和5年6月)

就業者数としてみれば、20年を通して大幅な増減は起きていないのです。

とはいえ、下記の「中小企業における産業別従業員数過不足DIの推移(全産業/製造業)」のグラフで見ると、ここ10年はほぼ不足の状態を示しています。

例外として2020年だけは、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、製造業では過剰に転じました。

しかしそれも一時的で、2021年以降は不足の状態へとすぐに逆戻りしています。

出典:(令和4年度 ものづくり基盤技術の振興政策)概要「2023年版 ものづくり白書」
経済産業省 厚生労働省 文部科学省(令和5年6月)

就業者数が増えないにもかかわらず、人手が足りていない状態がいわば慢性的に続いているともいえるでしょう。

高齢化社会における労働力人口の減少

日本では高齢化社会が年々深刻化しており、2023年現在、総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が29.1%と過去最高を記録しました。

出典:統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで- 統計トピックス No.138 総務省(令和5年9月 17 日)

高齢化社会の影響は働き手不足の問題に直結し、日本全体の労働力人口の低下につながります。

とはいえ65歳以上の高齢者の就業者数は年々増えているのです。

下記の「図1 高齢就業者(65歳以上)数の推移(全産業/製造業)」の資料をみてみましょう。

2002年から2022年の20年間で58万人から90万へと製造業の就業者数は32万人増加しているのがわかります。

また、全就業者における65歳以上の高齢者の割合は、2002年から2022年の間で、製造業においては4.7%から8.6%と増加しています。

2018年ごろからはほぼ横ばいの状態ではありますが、減少はしていません。

出典:(令和4年度 ものづくり基盤技術の振興政策)概要「2023年版 ものづくり白書」
経済産業省 厚生労働省 文部科学省(令和5年6月)

上記のグラフなどから分かるように、15歳から64歳までの全体的な労働人口は減少しているにも関わらず、65歳以上の高齢就業者数は増加傾向にあるのです。

若者の製造業離れとその理由

一方、就業者における34歳以下の若者の占める割合は、製造業においてはここ20年で384万人から255万人へと減少しています。

製造業で働く65歳以上の高齢者が20年で32万人増加したのとは反対に、若者は129万人減っているのです。

出典:(令和4年度 ものづくり基盤技術の振興政策)概要「2023年版 ものづくり白書」
経済産業省 厚生労働省 文部科学省(令和5年6月)

若者の製造業離れが加速している理由のひとつとして考えられるのは、職業選択が多様化してきたことがあげられるでしょう。

また、製造業に対して「仕事がきつい」「危険をともなう」「汚い」などといったネガティブなイメージが先行し、敬遠されやすいことも一因といえます。

工場が24時間稼働していれば夜勤などが発生し、シフトによってはきついと感じることがあるでしょう。

また、扱う製品によっては高温多湿、低温下による作業が発生します。

重量が重いものや危険な薬品を取り扱う場合もあり、他の仕事と比べて危険と隣り合わせになることも多くあるでしょう。

そのような製造業へのネガティブなイメージのひろがりが若者の製造業離れの一因となっているのかもしれません。

工場の人手不足がもたらす影響

工場の人手不足がもたらす影響

しかしこのまま工場の人手不足が続けば、日本の経済にとってマイナスであります。

そのうえ企業にとっても、さまざまな深刻な影響が今後、出てくるでしょう。

製品の受注がとれても製造が間に合わなければ、企業の成長機会を失います。

また、人手不足の状態が続けば、少ない人数で仕事を回さなければいけません。

労働環境の悪化が避けられず、ますますの人手不足につながることとなってしまいます。

つづいては、工場の人手不足が製造業や企業にとってどのような影響をもたらすことになるかについて考えていきましょう。

製造業の競争力低下とその結果

人手不足や若い世代の人材確保が困難な状態が続けば、新たな製品作りを始めることや、製造規模を増やしていくことは難しいといえるでしょう。

本来であれば中堅社員は従来の仕事を若い世代に任せて、より高度な仕事に専念したいところですが、若い世代がいなければ自分たちで行わなければなりません。

従来の仕事ばかりをしていれば、企業も人も成長する機会をなかなか得ることはできないでしょう。

そうなるとライバル企業と差別化をはかっていくことは難しくなってしまいます。

とはいえ、人手不足の問題は1つの企業に限ったことではありません。

製造業全体が人手不足の問題を抱えているため、全体の問題として考えていく必要があります。

それぞれが人材を確保し、新たな仕事を開拓できるようにならなければ、製造業界全体が衰退していくことは避けられないといえるでしょう。

製造業の競争力が低下していくことは、日本経済にとってもマイナスの結果をもたらします。

日本全体の問題として考えていく必要があります。

労働環境の悪化と離職率の増加

人手不足の状態であっても仕事の受注があれば、いまいる従業員や、場合によっては外注で仕事を回すことになるかもしれません。

無理な仕事受注が続くようでは、従業員の負担や残業が増えるなどの労働環境の悪化につながります。

また、人手不足を解消するために外注で仕事を回せば費用がかさみ、経営的に苦しくなる場合が出てくるかもしれません。

労働環境や経営状態の悪化は、従業員のパフォーマンスに影響をもたらしかねません。

従業員の肉体や精神に負担がかかることは、仕事のミスや大きな事故につながる可能性がないともいいきれないでしょう。

そのうえ、いまいる従業員への待遇がおろそかになれば、結果として離職率の増加を招くおそれがあります。

ただでさえ少ない人数で仕事をまわしているのに、いまいる従業員が離職してしまえば、さらなる人手不足におちいります。

もしそのようなことが起これば悲劇です。

人手不足により生産が追い付かなければ、たとえ仕事の受注率がよくても、事業の縮小や倒産に追い込まれる場合があるでしょう。

工場で働く人々が辞める理由や対策については、以下の記事でも詳しく解説しています。

企業の成長機会の損失

若い人材を新しく確保できない状態が続けば、従業員の高齢化はどんどん加速してしまいます。

せっかく良い製品を製造し高い技術があったとしても、技術を継承する人がいなければ、企業として続けていくことは困難です。

いままで培った技術の継承もままならず、将来的には企業の存続自体が危ぶまれる事態にもつながりかねません。

企業として新しいことを始めたくても、人手不足の状態では現状維持が精一杯でしょう。

もし人材が確保できればチャレンジできる仕事があったとしても、人手不足ではチャレンジすることすら難しいかもしれません。

大きなチャンスを逃すことにもなりかねず、企業としての成長機会を失う場合がでてくるでしょう。

こうしたことから製造業における高齢化や人手不足の問題は、企業の存続や成長機会の面からみて、深刻なことだといえます。

工場の人手不足解消のための最新戦略

工場の人手不足解消のための最新戦略

今後も続くであろう工場の人手不足の課題を解消するには、今までとは違う新しい戦略をたてる必要があります。

例えば、以下にあげることを意識してみると解決につながるかもしれません。

  • 今までとは違った層への求人アプローチ
  • 採用方法の見直し
  • 製造業へのネガティブなイメージの払しょく
  • 今いる従業員への待遇見直し
  • IT技術の導入
  • 業務の効率化

それぞれ詳しく解説していきます。

外国人、女性、シニアなどの活用

外国人、女性、シニア世代の方たちの雇用を上手く促進できれば、工場の人手不足の問題を解決できる手立てになるかもしれません。

例えば外国人の方を雇用する場合は「外国人技能実習制度」というものがあるので、活用してみるといいでしょう。

制度を活用すれば最長で5年間、就業してもらうことが可能です。

工場にとってはその期間、外国人の方の雇用が確保できるメリットがあります。

一方、外国人の方にとっては自国では習得が難しい技術を仕事をしながら学べます。

双方にとってメリットがあるのです。

いちど実績ができれば、今後は外国人の方の雇用を確保することが容易となるでしょう。

制度を上手く利用して外国人の方の雇用につなげ、人手不足を解消していくといいかもしれません。

また、女性やシニア世代の方たちが働きやすい環境を作ることができれば雇用が生まれやすくなり、人手不足解消に役立ちます。

例えば、現場のオートメーション化やai技術の導入などを検討してみるといいでしょう。

作業の効率化が図れて働きやすい環境作りが可能となれば、働ける人の幅がひろがります。

業務を分担するなど短時間勤務や肉体的な負担が少ない状態で働くことが可能となれば、女性やシニア世代の方たちも働きやすくなります。

いままでは働く時間や仕事内容、体力的な問題などで働きたくても働くのをあきらめていた人たちも大勢いることでしょう。

もしそのような方たちが働けるような環境作りが可能となれば、新たな雇用が生まれ、工場の人手不足問題解決につながります。

イメージアップと定着率向上の取り組み

いままで製造業と言えば「きつい」「きたない」「危険」というネガティブなイメージを持たれることが多くありました。

しかしシステム化が進んだ現在では「きつい」「きたない」「危険」を伴う仕事の大部分を機械が担うことが可能となりました。

現在の製造業の現場での正しい情報を伝え、ネガティブなイメージが払しょくできれば、工場への就業希望者の増加も期待できるでしょう。

Webサイトなどで仕事内容などを紹介して工場の魅力をアピールできれば、イメージアップにつなげることが可能です。

また、若い世代に向けて物づくりの楽しさなどを伝えることができれば、今後、働きたいと考える若者が増えていくはずです。

動画サービスなどを利用して魅力をアピールことや、SNSなどを活用して若者が問い合わせしやすい方法を作るのもいいでしょう。

工場の仕事をより身近に感じる機会が増えれば、イメージアップにつながり若者の就業希望が増えて、人手不足解消につながるかもしれません。

また、人手不足をおこさないようにするのに何より重要なことは、いまいる従業員の定着率を向上化することです。

労働環境や教育制度、待遇や福利厚生の見直しをいま一度してみましょう。

働きやすい環境づくりは、従業員の定着率向上に欠かすことができません。

従業員同士がコミュニケーションをとりやすい職場であるか、待遇や福利厚生、教育制度などが適正であるかを再度確認することです。

従業員にとって働きやすい環境をつくることで、定着率の向上を望めるはずです。

IT技術の導入と効率化による人材確保対策

IT技術を積極的に導入して業務を効率化していくことも、人手不足を解消することに役立ちます。

例えば、いままでは人に頼っておこなっていた業務をITに任せることができれば、多くの人材をそもそも必要としなくなります。

また、作業工程や在庫などのデータ管理にIT技術を活用すれば、一連の工程が正確なデータで可視化され、改善すべき作業を見つけやすくなります。

従業員が可視化された情報をいつでも共有できれば、問題が発生した時の対処が円滑に進み、業務の滞りを防ぎやすくもなるでしょう。

このように、IT技術の導入によって業務の効率化が進めば、生産性向上が実現しやすくなります。

少ない人数で生産力を保つことが可能となり、人材不足に対応できる土台の構築につながるのです。

IT技術の導入できつい仕事を人間が行わなくてよくなり、効率化された業務により従業員の負担が少なくなれば、職場環境の改善が見込めます。

働きやすい環境であれば人材確保が容易となり、人手不足の問題が改善していくでしょう。

また、技術習得に長年かかっていたのがIT技術の導入により短時間で可能となれば、研修に費やす時間を短縮できます。

ベテラン作業員が培ってきたノウハウをデータベースにまとめておけば、技術の継承を次世代へつなげていくこともできます。

技術の継承者が育たないといった理由で、廃業せざるを得ない状況を脱却する手がかりとなるかもしれません。

今後は、業務効率改善だけでなく技術の継承といった面でも、積極的なIT技術導入人材確保対策のカギとなってくるでしょう。

以下の記事では、工場のIT化のメリットや事例について詳しく解説していますので、こちらも合わせて参考にしてください。

人手不足解消には戦略実践のための基盤作りがカギ

人手不足解消には戦略実践のための基盤作りがカギ

工場の人手不足を解消するには、新たな基盤づくりが大切です。

いままでとは違う層への雇用をひろげてみたり、IT技術を導入したりといった新しい戦略を立てることが必要となります。

例えば、外国人、女性、シニア世代の方たちが働きやすい環境を作ることができれば、新たな雇用を生むことが可能です。

また、ITを導入して「きつい」「きたない」「危険」といった工場のネガティブなイメージを脱却できれば若者の雇用が見込まれるでしょう。

工場の人手不足を解消するには戦略的に考えて、新たな基盤づくりをしていくことがカギといえます。

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